仙台城南高等学校

小編成の吹奏楽部におけるICT活用

現在、学校における吹奏楽部活動の現場では、アレンジや楽譜の取り扱いに関して、二つの大きな変化が起こっています。

■ 短期的な変化
コロナ禍等により共同作業をオンラインのやりとりで進める機会が増えたり、個人練習の環境整備に対する重要性が増している。
■ 中長期的な変化
少子化に伴い生徒数が減りつつある学校教育現場では、吹奏楽部においても小編成向けアレンジの需要が増大している。

本稿では、これらの変化に対応するICTソリューションの一つとして、仙台城南高等学校によるFinaleの活用事例をご紹介します。

 


 

世界標準の「Finale」をオンラインでの共同作業、練習に活用

仙台城南高等学校 吹奏楽部は、例年の部員数わずか10名少々という規模で様々なコンクールにて実績を重ねており、作曲家・片岡寛晶氏とのコラボレーションは、吹奏楽界でも話題の一つとなっています。

仙台城南高等学校 吹奏楽部
仙台城南高等学校 吹奏楽部(写真提供 株式会社フォトライフ)

 

楽譜をFinaleでファイル化すれば、編集中の曲を電子ファイルとして遠隔地の共同作業者とシェア可能です。

仙台城南高等学校の吹奏楽部では、顧問の佐藤先生と、東京在住の作曲家・片岡氏が共にFinaleを用い、片岡氏が自作品の楽譜をFinaleファイルとして電子メールにて佐藤先生に送付、佐藤先生が生徒の編成に合わせてそれをFinale上で編集、実際に演奏した録音と共に更新したFinaleファイルを片岡氏にフィードバック、という形で、この数年間、東京ー仙台間のオンラインにてアレンジのやりとりを行っています。

2020年はコロナ禍によりオンラインでのやりとりが増加したものの、Finaleを用いた遠隔での共同作業の基本的なスタイルはこれまでと同様でした。

 

佐藤先生 「練習を重ねるうちに生徒の演奏技術が上がったり、4月になってオーボエ奏者が入部したりといった変化がありました。しかし片岡先生には東京から仙台に頻繁にお越しいただくこともできませんので、新たな楽器を活かせる場面を追加したり、すべての楽器の見せ場をつくるためそれぞれのソロを追加したり、中低音に立体的な響きが欲しいため声部を増やしたり、といったことをFinaleデータをお送りして先生に依頼しました。」

片岡氏 「単に曲を書くだけでなく、生徒さんの変化に伴いながらアレンジを進めるというプロセスでしたが、これはFinaleのデータがあったからこそ、それをアップデートしながら曲を発展させていったというのが非常に面白いところでした。」

 

Finaleはまた、日頃の練習でも活用されています。演奏に人間味を持たせるHuman Playback機能とGarritanサンプル音源を用いた臨場感あるプレイバックをmp3などで書き出し、参考音源として楽譜と共に生徒に配布することは、よく見られるFinaleの活用方法の一つです。

佐藤 学

佐藤先生 「特に新作の場合は佼成ウインドや大阪市音などプロのデモ演奏が聴ける機会は少ないので、Finaleに打ち込み、付属のGarritanサンプル音源でエクスポートしたオーディオ・ファイルをmp3に変換したものを、参考音源として生徒に配布しています。生徒はスロー再生や区間再生などの機能が付いたスマートフォンのアプリを併用し、この音源を使って個人練習を行っています。」

 

小編成に対応した「フレキシブル編成」とFinaleの活用可能性

小編成の吹奏楽部では従来、パートが足りないという理由から演奏できる曲の種類が限られていました。近年は少子化を背景に小編成の吹奏楽部が増加したことを背景に、様々な編成に対応可能な「フレキシブル編成」の曲が注目されるようになっています。

フレキシブル編成の楽曲は、その中のいくつかのパートだけでも演奏できる点が特徴で、例えば高音域グループの3人だけでも演奏でき、また全グループが一緒になっても演奏できるという構造になっています。

Finale 仙台城南高等学校
コロナ禍での練習の仕方を工夫できるように少人数で編成、3チームに分かれてコンテストに挑む

今後はさらなる少子化の進行でフレキシブル編成の楽曲に対する需要は増大すると推測されますが、これはFinaleに入力し電子ファイル化することで、特定の楽器編成向けにさらに柔軟で効率的なアレンジ作業を行うことができます。

 

佐藤先生 「Finaleでフレーズをコピー&ペーストする際は、移調楽器には移調された状態でペーストされますし、どの楽器が実際に何の音を演奏するかが一目で分かるように、移調楽器を実音表示に切り替える機能もあります。このようにFinaleデータ化すれば移調楽器の間での楽器変更も容易ですので、楽曲の使用条件の範囲内で自分の学校の編成に直すというのは、私だけでなく他にも行っている先生はいらっしゃると思います。」

片岡氏 「例えばフレキシブル三重奏の場合、フルートのみ、クラリネットのみなど同族楽器で、あるいはトランペット/テナーサックス/ホルンなど音域の近いもの同士で楽器編成を組んだ場合も効果的に聴かせられる場面が多いです。なので、フレキシブル編成の楽譜の利便性をさらに高めるため、これをFinaleに入力して編集するというのは大変良い考えと思います。」

 

 


 

インタビュー協力

佐藤 学

佐藤 学
宮城県出身。中学生からトロンボーンを始め、中高大で吹奏楽コンクール東北大会に出場。故 荒井弘を始めとする宮城県内の吹奏楽指導者から薫陶を受ける。合奏法を荒井富雄氏に師事。日本吹奏楽指導者協会(JBA)会員。みやぎ小編成バンド楽曲研修会事務局長。

片岡 寛晶

片岡 寛晶
1983年・福岡県飯塚市生まれ。東京音楽大学卒業。2007年・朝日作曲賞入選。2015年・片岡寛晶作品集【天馬の道】、2018年【想いの和々】のCDを、ブレーン社よりリリース。プロの演奏団体や音楽隊、教育現場などに数多くの作品を提供している。

(協力:株式会社プリマ楽器

 


 

製品詳細

MakeMusic Finale

世界標準の楽譜作成ソフトウェア


 

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