Ambisonics(アンビソニックス)とは?

今話題のAmbisonics(アンビソニックス)の、概要と製作方法を簡単に説明します。
アンビソニックスを知りたい方、制作を始めたい方必見。

VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)、360度ビデオなど新しい体感型コンテンツの普及にともない、 音楽やサウンドにも同様の表現力が求められており、今まさに様々な試みが行われています。
サラウンドに高さの表現を追加しサウンドに包み込まれる立体的な音響を再現するイマーシブ・オーディオ、立体音響をヘッドフォンで聞くことのできるバイノーラルなど、様々な再生方法やそれらを実現するテクノロジーが開発され、私たちの身の回りでも採用が進んでいます。
その中でもYouTubeやFacebookに採用された「Ambisonics」(アンビソニックス)が現在大きな注目を集めています。
アンビソニックスを簡単に説明すると、次の3点に集約することができます。

  • アンビソニックスとは、イマーシブ3Dオーディオのフォーマットの一種
  • アンビソニックスでは、360°球体の音場で、録音と再生が可能
  • アンビソニックスは、シーンベースのフォーマット

アンビソニックスとは、イマーシブ3Dオーディオのフォーマットの一種

「イマーシブ」(Immersive)とは、日本語では「没入」とか「没入型の」と翻訳されます。つまりイマーシブ3Dオーディオでは、一般的なステレオやサラウンドでは得られない高い「没入感」に浸ることができます。
またアンビソニック以外の著名なイマーシブ3Dオーディオのフォーマットとして、ハリウッド映画で広く採用されている「Dolby Atmos」「DTS:X」、ヨーロッパで開発され音楽コンテンツのリリースが多い「Auro-3D」などがあります。

アンビソニックスでは、360°球体の音場で、録音と再生が可能

Ambisonics(アンビソニックス)とは?Ambisonic制作用デコーダープラグイン:IEM Plug-in Suite / AllRADecoder
一般的なステレオ再生の場合、リスナーの前面から再生される平面的な音場ですが、5.1chや7.1chのサラウンドになると、リスナーを前後左右180°取り巻くようになります。さらに「Dolby Atomos」や「Auro-3D」といった3Dサラウンドの場合は、高さを加えたドーム型の半球面に音場が広がります。そしてAmbisonicsでは、360°全球面となり、リスナーをすべて包み込む球体が完成します。

アンビソニックスは、シーンベースのフォーマット

「シーンベース」(scene-based)とは何かを理解するためには、イマーシブ3Dオーディオ以外のフォーマットについて少し説明する必要があります。
イマーシブ3Dオーディオには、大きく分けて以下の3種類の方式があります。

  • チャンネルベース
  • オブジェクトベース
  • シーンベース(Ambisonics)

チャンネルベース

Ambisonics(アンビソニックス)とは?:Ambisonic制作/チャンネルベースのイメージ図
チャンネルベースとは、再生システム内のそれぞれのチャンネルに1:1で対応する再生方式です。
2台のスピーカーをつかって表現を行うステレオフォニックもチャンネルベースです。録音の段階から2台のスピーカーで再生することを想定し制作が行われています。
ステレオだけではなく、5.1chや7.1chといったサラウンドも基本的にはチャンネルベースで制作され、もちろんイマーシブサラウンドでもチャンネルベースの考え方を使うことができます。
主要なイマーシブ3Dオーディオのフォーマットである、NHKの22.2chマルチチャンネル音響や、ヨーロッパを中心に人気のあるAuro-3Dなどは、このチャンネルベース方式を使ったフォーマットとなります。

オブジェクトベース

Ambisonics(アンビソニックス)とは?:Ambisonic制作/オブジェクトベースのイメージ図
オブジェクトベースとは、音源(音声信号)の他に音響メタデータを付随させリアルタイムに各スピーカーからの出力する音を計算して再生する方式です。
例えば頭上を通過するヘリコプターの音のような動きを伴う効果音に対して有効で、それぞれの音を「オブジェクト」として捉え、オブジェクトがどのように動き、その結果音量がどのように変化するかをスピーカーレイアウトにあわせてデコードを行い再生します。
Dolby Atmosでは、オブジェクトベースとチャンネルベースの両方を使ったフォーマットです。

シーンベース

Ambisonics(アンビソニックス)とは?:Ambisonic制作/シーンベースのイメージ図
シーンベースは、リスナーを取り巻く空間全体の物理情報を360°の全天球空間に記録再生する方式です。
シーンベースに属するAmbisonicsでは、マイクを使ってその空間の音場(アンビエンス)のすべてを360°の球体の中に取り込むこともできますし、個別に収録した音を自由に球体の中に配置し、オブジェクトベースのように自由に動かすこともできます。
またAmbisonicsの最大の特徴は、それぞれの音の動きや位置を球体の中に有したまま、その球体を自由に回転させることができます。この特徴によりVRコンテンツや360°動画などの音響として使われることが多い方式となっています。
Ambisonicsはスピーカーレイアウトに依存せず、チャンネルベースを含まないため、どのようなスピーカーレイアウトであっても1つのAmbisonicsフォーマットのファイルで対応することができます。
Ambisonics(アンビソニックス)とは?:Ambisonic制作/ワークフロー

High Order Ambisonics

FacebookやYouTubeなどに採用されたことでAmbisonicsの音源を聴く環境が増えつつありますが、多くのAmbisonics音源はFirst Order Ambisonics、日本語では「1次アンビソニックス」と呼ばれるものです。
1次アンビソニックスでは全方位から聞こえる0次アンビソニックス(下図のW-channel)に水平方向、垂直方向、そして奥行きが加わります。
Ambisonics(アンビソニックス)とは?:Ambisonic制作/1次アンビソニックス
この状態でも上下・左右・前後という3次元の位置情報があるため、360度球体音場の再現は可能です。
ただしAmbisonicsの最大の特徴でもある音の動きや、球体音場の回転などを伴う場合ではそれぞれのチャンネル*の隙間が生じてしまい、音像の位置再現性が落ちてしまいます。
* ここでのチャンネルは、スピーカーの数ではなく空間を埋める方向とお考えください。
この問題を解決するのがHigh Order Ambisonics(通称:HOA)、日本語では「高次アンビソニックス」と呼ばれます。

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