VicBooth:株式会社アットチュード

ゲームやアニメ、アミューズメント施設などのサウンド制作を手がける、東京新宿区にある株式会社アットチュード、多くのクリエイター、ミュージシャンが所属し、音源の制作から録音、サウンドプログラムまでを一貫して行っています。制作物のクオリティのさらなる向上のために同社の新たな拠点に導入されたのが、ポルトガル発の調音パネルブランドVicousticが開発した次世代防音ブースのVicBooth Ultraです。国内としては初の導入事例となる今回、同社の代表取締役である藤原章人氏に導入の経緯から設置や施工など、運用してみての所感について伺いました。

文・取材◎伊藤 大輔 撮影◎八島 崇


藤原氏はもともと電機メーカーのサウンド・プログラマーの職歴を持ち、その後はクリエイター‏/ミュージシャンとしても活躍。BGMや効果音制作だけでなく、シンセなどのハードウェアへの幅広い知識を持ち、講師としての一面も持っています。これらの経験が同社の持ち味でもある、幅広くも柔軟な音楽制作のスタイルに生かされています。

「例えば歌モノを作る会社、作家を束ねる事務所、効果音を作る会社、ミキシングをする会社……って音楽制作に関わる会社は業務によって細分化されていますが、僕はわりと何でも屋さんとしてこれまでやってきたのでその知見を生かしたいなと。なので、私たちの会社ではゲームでもアニメでも、音声収録から声優さんの手配、BGMや効果音制作、ミキシング、その後のプログラミングまで、総合的にできるのが強みだと思っています」

株式会社アットチュード 代表取締役 藤原章人氏
株式会社アットチュード 代表取締役 藤原章人氏

会社の創立から10年を迎えて新たなオフィスを構える際に、藤原氏が必要不可欠と考えていたのが、録音やミキシングに対応したスタジオとしての機能でした。ただ、会社としてスタジオを持つという選択肢・可能性に関して、経営者として考えることがあったと言います。

「日頃から物件に施工して作る音楽スタジオはもったいないと思っていました。例えば近い将来に業務が拡大し、広いオフィスに引っ越す必要が出てきたときに、施工スタジオは次の場所に持っていけないし、前の場所を解体する費用もかかります。それならスタジオはどんな環境でも使える可搬性があれば資産的価値もあってよいなと。でも、一般的な設置型防音ブースは中の音が良くないですし、それと見た目もイマイチなんです。やっぱりいい音楽をつくるのに良いデザインは必要で、私たちは見えないものを作るからこそ、見えている部分を美しくしておかなればいけないと考えているので、VicBoothを実際に見たときに“これはいい”と思いました」

VicBooth Ultra 2×2。左奥にはコントロールルームとして使用する2×3が設置されている。

「アットチュード」の新オフィスはスケルトンの賃貸物件で、内装業者さんと話し合いながらVicBoothの設置場所を決めていったそうです。ポイントとなったのは“消防法”とのことでしたが、藤原氏曰く「VicBoothは形状が四角なので、図面上でもサイズが分かりやすかった」とのこと。実際にオフィスの内装の設計図から空間に合わせたサイズでVicBoothを発注し、ひとつは2×2サイズでナレーションやフォーリーなどのレコーディング・ルーム、もうひとつは2×3のサイズでコントロール・ルームを想定していました。VicBoothは自分でも組み立てられるのもポイントですが、今回はオーダーサイズが大きいものだったことあり販売元に依頼して専門のスタッフに設置してもらったそうです。

「まずデザイン性が良いので、お客さんにもブースに入ってもらいやすいですね。それとモジュール式で防音空間の拡張性があるのが良いです。設置した後からブースを広くしたり、狭くしたりというときも、手軽に対応できる製品は他にはないと思います。特に僕たちはフォーリーの収録業務も多いので、録りたい音像に合わせて空間をコントロールできるのは他にはないメリットだと思っています」

 取材時に現地のオフィスを訪れましたが、黒を貴重としたシックな雰囲気でデザインにこだわりを感じられる内装でした。オフィスには打ち合わせ用の会議室のほか、クリエーターたちの制作用デスクが並んだスペースと休憩場所があり、その端にふたつのVicBoothが設置されていました。ブース内部の機材配置に関しては試行錯誤を経て、今の仕様になったようです。2×3サイズのブースはデスクや椅子にも統一感を持たせた録音スタジオのような落ち着いた雰囲気で、コントロールブースの後ろに、確認用に人が座れる椅子も設置されていました。DAWはPro Tools|HDXシステムに加えて、アナログのアウトボードも厳選されたモデルが設置され、モニターにはパッシブタイプのFOSTEX NF01とサブウーファーも入っていました。調音パネルも部屋の後ろ側に反射音を調整するWavewoodを入れることで自然な響きを得ています。

「音像は極めてデッドで、よくここまで追い込んだなって思います。というのも、一般的な防音ブースは内部に音の反射があって、僕的には使えないものばかりだと思っていたので驚きました。VicBoothは一般的な商用スタジオと比べても遜色のないレベルだと思います。最初はコンピューターもスタジオ内に入れていたのですが、思った以上にデッドな環境でマシンやアンプの音が気になってしまい外に出しました。部屋の形状もわかりやすく四角形なので音決めもしやすく、個人的にはパッシブタイプのFOSTEX NF01がすごく相性が良くてバッチリと鳴ってくれました。それと内部に調音パネルを貼って細かく音を調整ができるのも良いです。このパネルがわかりやすく効いてくれるので調整もしやすいです」

続いて2×2サイズのブースはダクトレールに電球が設置されたスタジオらしい落ち着いた雰囲気で、ブース外とのコミュニケーション用のカメラと映像出しのモニターに加えて、アナログのコネクター・ボックスがあるのが印象的でした。

「アテレコなども多いので映像を見ながらできるようにはしています。Pro Tools|HDのDanteを利用してモニターやキュー出しなどのトークバックのシステムを組んでいます。ミキシング用のブースとの距離も近いので、あえてアナログのケーブルを使ってデジタルとハイブリッド仕様にしました。録りのメインで使っているマイクがヴィンテージのNEUMANN U87なのでそれも影響していると思います。こちらもあえて反射音を入れたい時などに、調音パネルでコントロールできるのが良いですね。大きい声のヴォーカルや金管楽器など、よくマイクスタンドと毛布で反射を抑えたりしますが、VicBoothはパネル1枚で調整できるのは便利ですね」

左が、VicPattern Ultra Wavewood、右がCinema Round Premium。 調音パネルでブース内の反射をコントロールできるのがVicBooth Ultraの最大の特徴。

VicBoothを導入したことで感じる利点について、ストレスのないスタジオの制作環境と、自分たちの使いやすさを追求した利便性だと、藤原氏は説明します。

「自分たちにとって機材選定から配線まで“使いやすいように”カスタマイズされているので、そのメリットは大きいです。外部の商用スタジオに行く時間も省けますし、外部スタジオを使ったときに感じる“僕らのやり方ならもっとこうしたいのに”というストレスもないですから。もちろん、VicBoothは一流のスタジオにかなわない部分もあります。でも製作・録音のツールが進化した現代の音楽制作では、いろんな対応力が求められることも多く、それに柔軟に対応することも重要です。私たちのような制作会社のスタジオとしてはVicBoothは理想的なものだと思っています」


導入機材

VicBooth Ultra

高い音響調整とデザイン性を兼ね備えた、グッドデザイン賞の次世代の防音+調音ブース。

 

 

 

 

 

 

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