御茶ノ水 Rittor Base

音と映像の多目的スペース「御茶ノ水 Rittor Base」

GENELEC・RMEを導入した、マルチチャンネル対応のイベント・スペース

1979年創刊の『キーボード・マガジン』をはじめ、『ギター・マガジン』など数々の雑誌メディアを中心に“音楽する”楽しさを広めてきたリットーミュージック。そうした出版社である同社がこの度、東京・御茶ノ水に注目のイベント・スペースをオープンさせた。その名も「Rittor Base」。音楽雑誌を発行する出版社がこうした自社施設を持つことの狙いとは?また、そこに導入されているGENELEC S360A7380A、RME Digiface Danteが選ばれた経緯とは?

文・取材◎山本 昇 撮影◎八島 崇

 


 

JR御茶ノ水駅。その御茶ノ水橋口の改札を出て、目の前の交差点の信号がもし青であったなら、駅からわずか1分で辿り着くだろう。そんな好立地に2019年春にオープンしたのが「御茶ノ水 Rittor Base」だ。

御茶ノ水RittorBase:國崎氏

「私たちはRittor Baseを多目的スペースと位置づけています。実際に2019年3月のオープンからすでにセミナーやレクチャー、ライヴ、映像収録、試写会、レコーディングと、さまざまな催しを行なってきました」

こう語るのは、当施設の管理・運営を担当するリットーミュージックのスタジオ事業部長、國崎晋氏だ。サウンド・クリエイターのための専門誌『サウンド&レコーディング・マガジン』で20年にわたり編集長を務め、長くレコーディングやSRの分野を見つめながらさまざまな提言を行なってきた人物である。その彼が中心となって作り上げた“多目的スペース”とはいかなる場所なのか。國崎氏へのインタヴューを通じて掘り下げていこう。

 

独自企画を含む多彩なイベントを随時開催

かつては音楽レーベルを立ち上げるなど、音楽制作にも取り組んできたリットーミュージック。現在は『サウンド&レコーディング・マガジン』の名前を冠したDSD配信専門レーベルを、ハイレゾ配信サイトOTOTOYとのコラボレーションで運営している。Rittor Baseは、こうした試みに活用することも可能だろう。

「2010年に、DSDダウンロードを世界に先がけてスタートさせたときはスタジオを借りて制作していましたが、これからはここで録音することも検討していきたいと思っています」

雑誌メディアの自社施設というと、情報発信の意味合いも大きいと思われるが、何か参考にした例はあったのだろうか。

「参考にしたのは、私も何度か出演したことのある〈DOMMUNE〉さんでした。魅力的なイベントを日々開催し、それをストリーミングして世界中に届けるというコンセプトですね。加えて、来場者の皆さんにいい音で聴いてもらいたいので極上のスピーカーを用意しました。」

ここで催されるイベントは、雑誌と連動したものが多いのだろうか。

「そこは本当にいろいろですね。雑誌発の企画があれば、Rittor Baseとしての独自企画もあります。過去には、『ベース・マガジン』主催でエフェクターの聴き比べをしたり、独自企画として映画の試写イベントを行なったりしています」

取材に訪れた日には、ニューヨークのギター・ビルダーを描いた話題の映画『カーマイン・ストリート・ギター』の試写が行なわれていたが、単に映画の上映だけでなく、その工房が制作したギターを実際に取り寄せ、しかもゲストとして招かれたギタリストの高田漣がそれを手にトークし試奏するという、ギター好きにはたまらないプログラムとなっていた。試写会にこうした一工夫を加えることで、来場者が見聞きした体験はより特別なものとして印象付けられることだろう。そして、そうした多様なプログラムはRittor Baseという場所への期待感も抱かせる。

30〜40人というキャパシティは決して広いハコとは言えないが、その分、来場者の1人1人には濃密な体験を保証できることだろう。それを支えているのが、先ほどの國崎氏の言葉にもあるように、最新のクリエイティヴ・シーンを取材してきた立場からのこだわりを体現した映像と音響だ。映画関係者も納得させた映像設備として、4K映像に対応するSONYの超単焦点プロジェクターを導入。また、動画配信のための本格的なリモート・カメラやスイッチャーも備えている。

 

良好な音響特性の意外な理由

この部屋は元々、キリスト教系の宗教施設として礼拝にも使われていたこともあり、防音と遮音はもちろん、左右の壁は後方に広がり、天井も後方に向かって高く傾斜させるなど、定在波が生じにくい設計となっている。

「すでに防音と遮音は完璧にできていましたから、施工の際は音を整える調音に集中できました。壁の表面は石のような素材なので、そのままだと響きすぎますから、カーテンで調整できるようにしています。ただ、それほど広い容積の空間ではありませんので、狭苦しい音にもしたくありません。ある程度、開放感のある音にしたいということで、日本音響エンジニアリングさんに施工を依頼して、『AGS』という音響拡散体を多数導入しています」

さらに、調音するうえで効果的だったのが床面に使用した木材だと言う。

「ローズウッドというギターの指板にも使われる高級材で、コストはそれなりにかかりましたが、とてもいい感じの反射が得られています。いい意味で硬い音というか、硬すぎない音というか……。しっかりとした響きがあって、音がブレないんです」

御茶ノ水 Rittor Base:内観

 

GENELEC S360Aと7380Aが選ばれた経緯とは?

2018年の11月に施工が完了したRittor Baseが稼働し始めたのは、2019年の3月から。その間は主な機材について、何を導入するか、じっくりと検討する時間に充てていたという。

「こうした施設を立ち上げる場合、通常は何を入れるのかを最初に決めてから、ワイヤリングも含めて業者さんにお任せして仕上げていくのが普通らしいのですが、ここの場合は全く逆で、まず部屋を造り、何を入れるかはそれから考えることにしました。いろんな機材をお借りして聴き比べを行ない、機材の一つひとつを吟味して決めていきましたその都度ワイヤリングも自分たちで行なっていたので、なかなか大変でしたね」

御茶ノ水Rittor Base:S360APそして、注目の音響設備にはメイン・スピーカーにGENELEC S360Aとサブ・ウーファーの7380Aが導入されている。S360Aは、カテゴリーとしてはスタジオ・モニターに分けられるモデルだが、ライヴ・イベントも催されるこの場所でこの種のスピーカーを選んだのはなぜだろう。

「先ほどこの場所を多目的スペースとご紹介しましたが、本当にいろんな用途で使っていて、空いている時間には当社が発行している雑誌の機材撮影にも使用しています。そういうときにも映り込まないようにするなど、スピーカーは必要に応じて動かせるようにしておきたかったのです」

そして、最終的にS360Aを選定した理由について國崎氏はこう語る。

「S360Aが出るという情報を目にしたときから、注目していたんです。多チャンネルなイマーシヴ時代のポス・プロ用スピーカーとして、コンパクトでありながら、いままでのGENELECのラージ・スピーカー並みの音圧が出せるという記述を読んで、“ひょっとしたらぴったりなのでは?”と直感したんです。そこで試聴してみたら、思った通りの音でした。とにかく十分な音圧は欠かせなかったのですが、S360AはかなりのSPLが得られて、しかもPA的ではなくスタジオ寄りのサウンドだったというのが主な選定理由です」

数十人とは言え、それなりの人数に向けて鳴らすためには、並のスタジオ・モニターでは厳しいところだろうが、パワフルなデジタル・アンプを内蔵したS360Aであれば、その正確なサウンドを会場全体で共有できるだろう。

「私自身、長らく雑誌でパワード・モニターを推してきたこともあります(笑)。パワードのいいところは、1台1台がアンプとのマッチングがよくとれているところでしょう」

S360Aの音は、ここを訪れるエンジニア諸氏からも評価が高いという。

御茶ノ水RittorBase:7380APMなお、サブ・ウーファー7380Aの導入については、「PAスピーカーと比べてスタジオ・モニターに足りないのが低域ですが、7380Aを導入することで十分すぎるくらいの低域が得られています」と話してくれた。國崎氏はそもそも、GENELECスピーカーにはどんな印象を持っていたのだろう。

「私が最初にGENELECを聴いたのは、『サウンド&レコーディング・マガジン』の取材で訪れた、ある音楽制作現場で使われていたS30でした。そのときの驚きはいまでも忘れられません。解像度、情報量の多さ、高域の伸び、どれをとっても最高で、これこそプロの音だと衝撃を受けました。以降も、GENELECはいいスピーカーをたくさん出していて、いろんなスタジオでも耳にしてきましたが、個人的にも好きな音という印象がありますね」

 

「GLM (Genelec Loudspeaker Manager)」の使い勝手

そして、Rittor Baseを自らの手で組み上げてきた國崎氏が特に評価していたのが、室内音響の特性を理想的なものに補正する「GLM 3」だ。その効果や使い勝手について伺うと……。

「実際の音を測定してチューニングできるGLM 3の優秀さにはシビれましたね(笑)。補正前後の音の違いには本当にびっくりしました。それなりに音を整えた部屋であっても、ある程度の山・谷があるのは当然で、補正前にはあるところでピークが感じられましたが、それがピタッと消えてフラットな特性に変わったんです。また、サブ・ウーファーの設置場所も紆余曲折してこの場所に落ち着いたのですが、ご覧のとおりメイン・スピーカーとの距離がそろっていません。でも、サブ・ウーファーを含めて位相調整もしてくれるので非常に便利です。しかも、それがとても簡単に行なえるのはありがたいですね」

従来のチューニングと言えば、音響補正用の機材を物理的に足したり、あるいはグラフィック・イコライザーで特性を調整したり、お金と時間をかけて行なっていたものだが、それが「測定一発、1〜2分程度で完了」するというのだから、こうしたDSP技術の進歩には目を見張るものがある。当施設ではすでに、可動式の観客席の有無で2種類のプリセットを用意しているということだが、GLM 3のようなソリューションは運用するうえでも強力なツールとなっているようだ。

御茶ノ水RittorBase:内観

 

他の施設との差別化にも優位なマルチ・チャンネル対応

部屋の周りを見渡すと、スピーカーはメインのS360Aのほか、天井や床に小型のスピーカーが複数設置されているのに気付く。そう、ここRittor Baseはマルチ・チャンネルにも対応しているのだ。

「サラウンド用にCODA AUDIOのD5-Cubeというフルレンジ・スピーカーを8台導入して、さまざまなスピーカー・レンダリングをしています。ハイト・スピーカーも設置し、Dolby AtmosやAuro-3D、DTS:X、22.2chといったイマーシヴ・フォーマットもオリジナルのパッチを組むことで対応しています。いまどき5.1chは当たり前ですから、開設当初から立体的なイマーシヴ・サウンドに対応することを目指していました。お陰様で、そうしたサラウンド関連の催しのお話もよくいただいています」

最近は映画だけでなく、音楽作品でもマルチ・チャンネル化したものも増えているが、そうしたサウンドを映画館ではなく、このようなイベント・スペースで多くの聴衆と共有できるというのは珍しい。

「実際にやってみると、立体音響に対応したライヴ・スペースを探していた方が多かったことに気付きました。“こういう場所を探していました”という言葉はよくいただいています」

 

こだわりのデジタル・コンソールと伝送システム

Rittor Baseでは現在、伝送システムにはDanteを使用している。これを選んだ理由を尋ねると、コストを意識しながらも、クオリティにはこだわりたいという國崎氏の姿勢が浮かび上がってくる。

「コンソールはALLEN & HEATHのSQ-5なのですが、これを選んだのは、予算内のデジタル卓の中から96kHzで動くモデルを探した結果です。48kHzでもよければ選択肢は広がったのですが、これまでハイレゾを推奨してきた手前、このスペックにはこだわりたかったのです。SQ-5はプリ・アンプの音も良く、大変満足しています。そして、このデジタル・ミキサーがサポートしていることもあり、サラウンドを含めたネットワークをDanteで組むことになりました」

その伝送システムについて、國崎氏はさらにこう付け加える。

御茶ノ水RittorBase:Digiface Dante「ただ、この先はMADIに対応する機材の導入も考えられますので、RMEのDigiface Danteを用意してこれに備えています。Digiface Danteがあれば、DanteとMADIを混在してネットワークが組めますからね。また、サラウンドを構成するためのプロセッシングを行なうWindowsのノートPCにUSB3.0で接続しているDigiface Danteは、Windowsだと録音機能(Global Record)が使えるので、先日行なったサラウンドのイベントでは音声をすべて録音することができました。これはなかなか便利な機能ですね」

 

本格的な映像設備もワンオペで対応

冒頭でも触れたように、Rittor Baseは音響機材だけでなく、映像設備も充実している。

「当初はここまでちゃんとしたものを入れようとは考えていなかったんですよ。でも、SONYの超単焦点プロジェクターも、この画質を観てしまうとどうしても導入したくて(笑)。また、同じ頃に出来上がった音響スペース「Artware hub」を見学させていただいたときに気になったのがリモート・カメラでした。映像設備として、当初は普通のカムコーダーを2〜3台購入するつもりだったのですが、そこで見たリモート・カメラがあまりに素晴らしくて。“これがあれば映像もワンマン・オペレーションで扱えるのでは”と思い、カメラ2台とスイッチャーを導入しました」

では、気になるイベント開催時のオペレーションはどのように行なっているのだろう。

「ここではオペレーターに常駐してもらっているわけではありません。卓のマニュアルも通勤中に隅から隅まで自分で読み込んで、なんとか使いこなせるようになりました。スイッチャーとリモート・コントローラーをコンソールの隣に置いて、いまでは完全に私1人で映像と音を制御できています」

 

 

音楽やミュージシャンの素晴らしさを届けたい

御茶ノ水RittorBase:國崎氏今後、Rittor Baseがどんなスペースとして展開していくのか。國崎氏は少し先の未来について、このように語ってくれた。
「私自身、当初は想定していなかった使い方−−−例えばレコーディングも最初はそんなにやるつもりはなかったのですが、イベントに出演してくれたバンドから“この部屋が気に入ったので、録音に使わせてください”という要望があり、実際に録音も行ないましたし、映画の試写会も予定していたわけではありませんが、お陰様で好評です。用途を絞ることなく、何にでも対応できるようにと考えていたのが、いい形で転がり始めていますので、これからも予期しないことをいろいろできるといいなと思っています。そして、いいカメラも導入しましたので(笑)、生中継を含めた動画配信も、もっと増やしていきたいですね。ただ、ワンマン・オペレーションは大変なので、さすがに毎日というわけにはいきませんけれど(笑)」

最後に、雑誌作りからイベント運営へ、形を変えても読者やオーディエンスに伝えたいことは何かと尋ねると、このような答が返ってきた。
「それはずっと変わらなくて、“これは”と思う音楽の良さ、プレイヤーの素晴らしさを1人でも多くの人に知ってもらいたいということに尽きます。雑誌やイベントなどメディアを変えながら、そんなことをやっているわけですね。だからこそ、基本的にここはハコ貸しをしません。こちらが主催、もしくは共催という形にこだわってイベントのクオリティを担保して、リットーミュージックとしてお勧めできるものをどんどん発信していきたいと思っています」


導入機材

GENELEC S360A

GENELEC S360A

音声の解像度や音質を損なわずにハイSPL出力を提供するスタジオ・モニター

GENELEC 7380A

GENELEC 7380A

SAMファミリーの低域をさらに強化するGenelecのフラッグシップ・スタジオ・サブウーファー

RME Digiface Dante

RME Digiface Dante

256チャンネル 192 kHz Dante – MADI対応USB オーディオインターフェイス / コンバーター

 


 

御茶ノ水RittorBase御茶ノ水Rittor Base

リットーミュージックが楽器の街・御茶ノ水に開設した多目的スペースです。楽器の音が理想的に響く環境を整え、機材も最高のものを用意しました。

公式サイト

Bloom of Sound 2020 作品紹介

弊社グループの株式会社シンタックスジャパンが運営するレーベル「RME Premium Recordings」よりハイクオリティなイマーシブ コンテンツを収録したニューアルバム『Bloom of Sound 2020
– UNAMAS presents Awarded Best –』がリリースされました。「RME Premium Recordings」では、シンタックスジャパンが取り扱うドイツのプロフェッショナル オーディオ ブランド「RME」を使用して録音された、色付けのない透明無垢なサウンドで演奏会場の空気感さえも余すことなく録り込んだレコーディング作品を、録れたての音を産地直送さながらに余分な加工をせずにユーザーの再生環境へ届けることを基本理念とし、録音段階から24bit/96kHz以上の真のハイレゾ・コンテンツをリリースし続けています。

RME Premium Recordingsの第14番目のリリースとなる本作品は、ハイレゾ・サラウンド音源の黎明期よりハイクォリティな作品をリリースし続けている音楽レーベル「UNAMAS」とのコラボレーションアルバムとなりました。過去に「UNAMAS」レーベルからリリースされている数ある作品の中から、日本で最も権威のあるプロフェッショナルな音楽録音賞である「日本プロ音楽録音賞」において受賞した作品のみを集めた、珠玉の作品集となっています。

日本プロ音楽賞とは
音楽文化と産業の発展の一翼を担う録音エンジニアが制作し応募した音楽録音作品について、エンジニアが有する音楽に対する感性、技術力等を評価し顕彰することでエンジニアの技術の向上と次世代エンジニアの発掘を図ることを目的する、日本で最も権威のあるプロフェッショナルのための音楽録音賞。一般社団法人日本オーディオ協会、日本レコーディングエンジニア協会、一般社団法人 日本音楽スタジオ協会、一般社団法人日本レコード協会が合同で主催。1994年に第1回がスタートし、2019年には第26回を迎えた歴史あるアワードである。
https://www.japrs.or.jp/pro_rec/

2013年から2019年までの全受賞作品6タイトル(2015年からは5年連続受賞。そのうち2作品は最優秀賞)を網羅したこのアルバムは、「ART」「Technology」「Engineering」という3つの要素を融合させ、常に録音芸術シーンを牽引しつづけているMick Sawaguchi氏の録音に対する情熱に溢れています。細部にまで注意が払われ、現場の空気を余すことなく捉えた録音は、まさにイマーシブオーディオ作品のリファレンスとしてふさわしい仕上がりになっています。

 

Bloom of Sound 2020

BLOOM OF SOUND 2020 UNAMAS presents Awarded Best (RME-0014)

レーベル:RME Premium Recordings

発売元:株式会社エムアイセブンジャパン

価格:4,000円(税別)

Amazonにてアルバムを購入

 

 

Order Name Lap Album NO Artist
M01 Voice Check 00’6″
M02 Concerto No.3 in F Major.RV 293 Autumn 12’11” UNAHQ 2015 ViVa Four Seasons UNAMAS Strings Sextet
M03 Sonata for Strings NO1 in G Major Andante 04’14” UNAHQ 2014 Touch of Contrabass UNAMAS Strings Quartet
M04 Theme from Schindler’s List 05’55” UNAHQ 2014 Touch of Contrabass Ippei Kitamura
M05 Franz Schubert No-14 in D minor Death and the Maiden Allegro 16’24” UNAHQ 2009 Death and The Maiden UNAMAS Strings Quintet
M06 Contrapunctus 01 03’17” UNAHQ 2007 The Art of Fugue UNAMAS Fugue Quintet
M07 Contrapunctus 14 07’45” UNAHQ 2007 The Art of Fugue UNAMAS Fugue Quintet
M08 Jour Naissant 03’53” UNAHQ 2003 Reimei Jun Fukamachi
M09 Fugace 05’07” UNAHQ 2003 Reimei Jun Fukamachi
M10 Nature surround 02’05” Bonus Track Mick Sawaguchi

 


 

ディスク概要

本アルバムは、Blu-RayディスクとCDの2枚組となっており、Blu-Rayプレイヤーをお持ちでない方は、通常のCDプレイヤーでも作品を楽しめるようになっています。

 

Blu-rayディスクは、ミュンヘンのmsmスタジオが、Lindberg Lydと共同で開発した「Pure Audio Blu-ray」フォーマットにて制作されています。

各曲が以下のそれぞれのフォーマットで収録されており、リモコンの青・赤・緑・黄の色ボタンにより、再生中に希望の再生フォーマットを”on-the-fly“で切り替えることができるため、例えば、2チャンネルと5.1チャンネルの聞こえ方の違いや、イマーシブの再生環境をお持ちの方は、Dolby AtmosとAuro 3Dというフォーマットの違いを聴き比べることができます。

  • 2ch   ステレオ(192kHz/24bit)
  • 5.1ch   サラウンド DTS-HD Master Audio (192kHz/24bit)
  • 11.1ch     Dolby Atmos
  • 11.1ch     Auro 3D (96kHz/24bit)

Bloom of Sound 2020 PureAudio Blu-Rayのオーサリングには、全て、192kHz/24bitのデータを元に、それぞれのフォーマットが対応しているサンプリングレートにダウングレードしたデータを使用しています。DTS-HD Master Audioと2チャンネルステレオの場合は、フォーマット的に192kHz/24bitまで対応しておりますので、そのまま192kHz/24bitとなっておりますが、Auro 3Dの場合は規格上、96kHz/24bitまでとなっておりますので、元の192kHz/24bitデータを単に96kHz/24bitにダウンサンプリングしているだけで、各フォーマットに合わせた”リミックス”作業は一切行なっておりません。Dolby Atmosも同じで、Dolby Atmosの場合は、48kHz/24bitデータにダウンサンプリングしたデータを入稿し、そのままDolby Atmosオーサリングをしています。そういった意味では、このディスクは、各フォーマットの”純粋”な比較ができる大変貴重なディスクと言えると思います。

また、目立たない部分ではありますが、冒頭に収録されている「チャンネルチェック」も、非常に便利です。イマーシブ再生環境を組んだことのある方であれば誰しも一度は経験したことがあると思うのですが、特にリアチャンネルやハイトチャンネルなどは「あれ?ちゃんと音が出ているかな?」「チャンネルアサイン間違えてないかな?」という感覚になることがとても多いと思います。そんな時は、この「チャンネルチェック」が役に立ちます。薄くホワイトノイズの入ったチャンネル名の音声により、チャンネルアサインを瞬時に確認することができます。

皆様の、今後のイマーシブオーディオでの制作環境に、このディスクが「リファレンス」としてお役に立てれば幸いでございます。

 

また、付属のCDは、MQAでマスタリング処理された、CDプレイヤーで聞ける再生可能なハイレゾ作品となっています。

お使いの再生機がMQAに対応している場合は自動的にデコードされ、PCM 176.4kHz/24bitにて作品を楽しむことが できます。また、MQAに対応していない再生機器をお使いの場合でも、通常のCDフォーマットで ある44.1kHz/16bitにて作品をお楽しみいただくことができます。 MQAの詳細は、こちらをご覧ください。

 

つづきまして本作品の技術面に関して少し解説をさせていただきます。

 


 

マイキングで全てを完結し、何も足さない ・ 何も引かないマスター制作

UNAMASレーベルは、音楽の持つダイナミックレンジを損なうことなく「何も足さない、何も引かない」マスター制作のための入念なレコーディングとMIXを信条としており、ここに収められた作品も、もちろんNo EQ/No Comp。楽器の音、マイクの音、機材の音、すべて「生(き)の音」となっております。

 

ハイレゾ高音質を可能とする最新デジタル技術の導入

真のハイレゾ作品は、昔の技術で収録された作品の焼き直しなどではなく、最新のデジタル機材を使用して現時点において、もっとも汎用性が高く、かつ、高解像度のフォーマットを通じてのみ作成されるべきという考えに基づき、このディスクに収められている作品は、ほぼすべてMADI機器を使った録音システムで収録されています。

Bloom of Sound 2020  MADI レコーディング システム

MADIとは、光ケーブルを使い、ステージ上での演奏を鮮度の高い状態のまま劣化なく長距離伝送することが可能なデジタル伝送規格の一種です。

Bloom of Sound 2020 MADI レコーディング システム 接続図

この特性を生かすことにより、ステージ上など演者にできるだけ近い場所にマイクプリアンプを設置しデジタル変換を行うことが可能になり、結果として音質向上に大きく貢献することができます。現代のレコーディングにおいて音の劣化に最も影響するアナログ信号の伝送経路を極力短くし、ステージ上での演奏を鮮度の高い状態のまま「真空パック」して収録することができるこのシステムを構築しているのは、「Micstasy」ならびに「DMC-842」といったマイクプリアンプをはじめとする、ドイツのプロフェッショナル オーディオ ブランド「RME」のMADIシリーズです。

また、作品の多くは、そのオーディオ エンジンのクオリティの高さから 国内ではマスタリングソフトとして定番のDAWソフトウェア「SEQUOIA」によって録音されています。本場ドイツのクラッシック音楽の録音現場においては、このRMEとSEQUOIAという鉄板コンビネーションは、まさに「定番」であり、数多くの名盤がこの手法で録音されています。

本ディスクに収められている作品は、先述のように、ミックス作業においても、できるだけ加工をせず、録音現場で収録された音をそのままパッケージングするように心がけて制作されているため、RMEやSEQUOIAのオーディオクオリティをチェックするためのオーディオカタログとしてもお使いいただけます。

なお、本作品のクラシック音楽の録音では11.1チャンネルのイマーシブ・オーディオを前提とし、ベースチャンネルは7.1として収録されています。メインのマイクロフォン(5チャンネル) は、デジタル・マイクロフォンを導入し、Left、Right、Center、Surround Left、Surround Right、LFEで構成。ハイト(上部)スピーカー用のマイクロフォンは、4チャンネルで構成しています。さらに、レコーディングに使用する機器電源はバッテリーを使ったり、各機材にもEMCノイズ対策を徹底的に施し厳重なノイズ対策を施しています。

Bloom of Sound 2020  イマーシブオーディオの録音 マイキング

 


 

スタジオや研究・教育機関などで、イマーシブ環境の構築をご検討の方は是非下記の「お問い合わせ」よりお知らせください。

専任の担当がお客様の環境やご予算に合わせて適切なイマーシブ環境のご提案を行わせていただきます。

 

参考資料:

Genelec イマーシブ ガイドブック

ダウンロード申請

 

Genelec Immersive Solutions : 没入感サラウンド制作ガイドブック

イマーシブサラウンド制作や、イベント、インスタレーションなどでイマーシブ再生環境の構築をご検討の方は是非ご覧ください。

【目次】

音声知覚からみたImmersive Audio とは …4
Immersive Audio の技術背景と現況の各種フォーマット …6
研究向けや実験検証用に最適化したシステム構成 …8
Genelec が提案する規模別最適システム構成例 …10
GLM™ソフトウェアによるImmersive Audioシステムのモニター配置
キャリブレーション、コントロール機能について …14
スタジオにおけるモデル別性能比較 …15
Genelecスタジオ・モニター一覧 …17

 


 

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東京音楽大学 中目黒・代官山キャンパス

イマーシブ・オーディオ/MADIがキーワードの最新鋭スタジオ

昨年創立111周年を迎え、その記念プロジェクトであった中目黒・代官山キャンパスを今年4月に開校した 東京音楽大学 。その注目事項として、イマーシブ・オーディオ環境とMADI接続のレコーディング・システムを整えたスタジオの設立が挙げられる。さらに、学生指導用としてPRESONUS Studio Oneなどのソフトウェアも導入されたという。ここでは関係者に話を伺い、その実像に迫っていこう。

 

出典:東京音楽大学 中目黒・代官山キャンパス by サウンド&レコーディング・マガジン編集部 2019年11月19日
撮影:八島崇

東京音楽大学

サウンド&レコーディング・マガジン 特別記事

東京音楽大学 中目黒・代官山キャンパス 〜イマーシブ環境を実現したスタジオと充実のソフトウェア〜

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働き方改革:オフィスの音響調整

オフィスの音環境に満足していますか?

最近、テレワーク、リモートワークが増えて実感されている方も多いと思いますが、自宅の方がより集中でき、仕事の効率が上がるという人は多いのではないでしょうか? そして、これは仕事場に溢れている「ノイズ」が原因となっており、その「ノイズ」が集中力を下げ、仕事の効率を落としているということをご存知でしょうか。

人の耳は自分で意識的に選んだ音を集中的に聞き、他の音(ノイズ)の音量を脳内で下げるという処理を行なっており、これを「カクテルパーティー効果」といいます。試しに一度、社内の音をマイクで収録してみてください。(収録には、全帯域を無指向=180°で収録できるマイクを使ってみてください) 電話の音、自分が直接関係しない同僚の仕事上の会話、キーボードを叩く音、空調の音、などなど、、、皆がどれだけ気をつけていても、人が集まって仕事をする以上、そこには、必ず「音」が発生ていることに気づくと思います。そして、マイクを使って仕事場を録音してみてみると、脳内でのフィルター処理がかかっていない ”すっぴん” の「音」を聞くことができますので、結果として、普段自分がどれだけ必要としていない音=ノイズに囲まれているかが一目(聴)瞭然になり、あまりにも様々な音が、自分が認識していたより大きな音で存在していたかに気づき驚くと思います。そして、逆説的に考えると、この様々な「ノイズ」を自動的に脳内で気にならないようにフィルター処理していた、人間の知覚の素晴らしさに気づくと思います。

脳の行なっているフィルター処理は、実は大変複雑な処理で、この処理を瞬時に行うために、自分の気づかないところで脳は非常に複雑なタスクを処理し続けているのです。したがって、1日の終わりには、脳はぐったりと疲れてしまっています。多くの場合、この疲れは「ストレス」として表現されます。もちろん、社会生活には音によるストレス以外にもたくさんのストレスがあり、それらは、音響調整アイテムを使っても取り除くことができませんが、少なくとも、音響調整アイテムを使えば、随分と音由来のストレスを緩和させることができるのです。

このブログでは、どのように仕事場の「音」環境を改善できるのかをご紹介したいと思います。

 

どれだけの時間を仕事場で過ごしていますか?

1日8時間労働と考え、週に5日働いている人の場合、週に40時間、1ヶ月でおおよそ160時間を仕事場で過ごしていることになります。現代の多くの社会人は、睡眠時間と同等、またはそれよりも長い時間を仕事場で過ごしているのです。それほど長い時間を過ごす場所ですので、当然仕事場の環境を整えることは、経営者にとってとても大切な事案になります。睡眠の質を向上させるために、ベッドを変えたり枕を変えたりするように、仕事場の”音”環境も、比較的簡単に改善することができます。一度に全ての”音”環境を改善できない場合は、特に困っているところから順番に少しずつ改善してみてはいかがでしょうか。

 

仕事場の ”音” 環境を改善するメリット

仕事場の音響を改善するとこんなメリットがあります。

 

メンタルヘルス効果

メンタルヘルスの健全さが仕事や人生に大きな影響を与えることは、当然の事実です。そして、仕事環境にも、最適な音楽・環境音などを、適切なボリュームで流すことにより、メンタルヘルスの向上が期待できます。これに関しては、様々な学者が様々な研究を行なっておりますので「なんとなくそんな気がする」というレベルではなく、科学的に検証されている結果なのです。メンタルヘルスが改善すると、心が前向きに意欲的になり、仕事のパフォーマンスがアップします。従業員の心身が安定し生産性が上がれば、会社の業績にも必ず良い結果がもたらされることが大いに期待できます。

 

マスキング効果

マスキング効果とは、簡単にいうと、職場に存在する「ノイズ」を目立たなくするトリックです。特に先述の「自分が直接関係しない同僚の仕事上の会話」など人の声は、会話の音を「遮断」するのではなく、人の声に近い周波数帯の”音のカーテン”を引いてあげることで、会話の内容が聞き取れなくなり、脳が会話の内容を分析することをストップすることで、気にならなくなる効果を利用して、より良い仕事環境を構築するアプローチです。

また、厳密には、マスキング効果とは異なりますが、ワーキングスペースに適度なパーティションを設けることにより、物理的に話し声などをブロックして音量を減衰させるアプローチもあります。

どちらのアプローチでも、集中力を高め、パフォーマンスを向上させることに大いに貢献することが期待できます。

 


 

ワーキングスペースの 音響改善

ワーキングスペースでの音響改善に最適なソリューションをご紹介します。

音の改善は、音の入り口と出口(マイクとスピーカー)の改善が、まずは最も効果があります。

したがって、オフィスの音環境を整えるためにBGMや環境音を流すにも、やはり良いスピーカーを使った方が、その効果が高まるということが言えます。

 

Genelec  4430A Smart IPスピーカー

世界中のプロフェッショナルに認められている、北欧(Finland)のスピーカーメーカーGenelec(ジェネレック)のIPスピーカーを、まず最初にご紹介します。

Genelec 4430A

このスピーカーは、アンプを内臓している、いわゆる「アクティブ・スピーカー」となっていますので、アンプを別途用意する必要がありません。しかも再生ディバイスとは、LANケーブル1本で繋がってしまいますので、電源もスピーカーケーブルも必要ありません。下記の図のように、PoEもしくはPoE+に対応したスイッチングハブから、各スピーカーへLANケーブルを接続するだけです。施工も簡単ですし、何より大量のケーブルを職場内に敷設する必要がないため、見た目も大変美しく設置することができます。サイズは、4430Aと、少し小柄な4420Aの2種類から選べます。

Genelec 4430A

音源の再生は、PCもしくは、IP伝送に対応したCDプレイヤー、BGM再生装置などから行います。この部分も、スイッチングハブにLANケーブル一本でOKです。

さらに、これはIPスピーカーならではの機能ですが、スピーカー・グループを設定することにより、特定のスピーカーからは、他のスピーカーとは異なる音源やボリュームを設定することが可能です。異なる環境に対して、2セットの(またはそれ以上の)システムを導入することなく音源を完全にコントロールできるため、大幅なコストカットを行うことができるのです。

 

ちなみに、少し丸みを帯びた特徴的なこのスピーカーの外観は、Finlandが誇る世界的に有名なデザイナー ハッリ・コスキネン(Harri Koskinen)によるものです。ハッリ・コスキネンの代表作は、この「ブロックランプ」という室内照明です。皆さんも一度はどこかで見たことがるのではないかと思います。

 

 

GENELEC RALカラー

 

また、Genelecは、カラーオプションも豊富です。

白や黒以外にも、ドイツの標準 RALのカラーチャート120色から自由に選ぶことができますので、どのようなインテリアデザインともマッチさせることができ、ワーキングスペースの家具など内装デザインを損なうことなく自由にお洒落にリスニング環境を構築することができます。

 

 

 

 

 

 

そして、取り付け金具のオプションも非常に豊富ですので、天井や壁に取り付けたり、デスクの上に設置したりと、自由なレイアウトを行うことができるのも魅力のひとつです。

Genelec アクセサリー・カタログ

 

 

 

 

Genelecのスピーカーは、世界中の音楽スタジオや放送局で、まさにデファクトスタンダードとして選ばれているので、その音質は折り紙付き。Genelecの正確な再生は、世界中の音のプロフェッショナルに選ばれていることで実証されています。

ワーキングスペースに適切なBGMや環境音を流すことにより、マスキング効果や、メンタルヘルス効果を得ることができるのですが、いくらコンテンツにそういった効果があっても、それを再生するスピーカーが正確な仕事をしていないと全く意味がありません。「とりあえず音が出ていれば効果あるんじゃない?」と思われるかも知れませんが、実は、耳と脳は自分で思っているよりはるかに繊細で敏感なのです。心地よく感じる音を言葉で表すのは至難の業ですが、逆に、聴けば誰でもすぐに判ります。せっかくの音響改善ですので、是非、より良い音でコンテンツを流してみてはいかがでしょうか。

 

次に、ワーキングスペースにパーティションを導入し、ノイズ源をブロックする方法を紹介します。

特にオープンなレイアウトのオフィスで、最も頻繁に発生する「ノイズ」は、社員同士の会話です。 1mの距離での通常の音声は約60 dB(A)であることがわかっています。電話の呼び出し音、話している人など、バックグラウンド ノイズは、個人の集中力を乱す可能性があります。だからと言って、こうしたのノイズが一切オフィスからなくなると、逆に、異なるチーム/アクティビティ間の音声プライバシーに悪影響を与える可能性がでてきます。つまり、何を話していても、フロアを共有している人に全て筒抜けという状態になってしまうわけです。
実は、バックグラウンド ノイズは、オープンなレイアウトのオフィスにおいて、集中を損なう会話ノイズをマスクするのに役立っているのです。ただ、バックグラウンド ノイズのボリュームが大きすぎると、元も子もありません。
ヨーロッパなどのガイドラインでは、オープンなレイアウトのオフィスの場合、安定したバックグラウンドノイズをNR40前後にする必要があると規定されているそうです。そして、これは、ワーキングスペースに適度なパーティションを導入することにより比較的簡単に実現することができます。

オフィスの音響改善

 

Vicoustic

室内音響の調整アイテムとして今回ご紹介するのは、ポルトガルの室内音響ソリューションメーカー「Vicoustic」です。 Vicoustic は、音のプロフェッショナルたちが活躍する音楽スタジオや、シビアな耳を持つHi-Fiオーディオのファンに広く愛用されており、その効果はまさにプロクオリティです。通常、室内音響を調整する場合、そういったノウハウを持つ専門業者に依頼し施工を行うことが多いと思いますが、その場合、大変大掛かりな工事になる上に、大変なコストがかかってしまいます。また、ウェブショップなどで、室内音響調整用のスポンジやパネルなどを購入し、DIYで施工することもできるのですが、ウェブで見つけることのできるアイテムは、グレーや白といった、お世辞にも見た目が良いと言えないものが非常に多く、せっかく家具などインテリアに凝ったオフィスを作っても、それが台無しになってしまいます。「Vicoustic」の製品は、そのような悩みを解決する、プロクオリティの効果と高いデザイン性を併せ持つソリューションです。施工も比較的簡単で、自立スタンドから、吊り下げタイプなど様々なオプションがあります。

以下に Vicoustic を使ったオフィスの例をいくつかご紹介いたします。

 

会議室の音響改善

次に、会議室の音響改善の例をご紹介いたします。

最近、テレワークや、異なるオフィス間のコミュニケーションで、ウェブ会議を行うことが増えてきたという方、きっと多いと思います。

ウェブ会議においては、ビデオの画質より、音質の良さが圧倒的に重要になります。声が明瞭に聞き取れなければ、会議は成り立ちません。しかし、せっかく電子会議用の専用マイクを導入してみたけど、なんだか聞き取りにくい…という経験をされた方も少なくないと思います。

この原因は、2つあります。

1つは「マイクなど音響機器の性能」。そして、もう1つは「部屋の反射」です。

 

ウェブ会議に使用する音響機器の改善

弊社グループでは、プロのサウンドエンジニアが使う機器を中心に様々なブランドを取り扱っておりますが、今回はその中でも、取り扱いが簡単なものを中心にご紹介したいと思います。

ウェブ会議では、PCを使いネットに音声を配信することになるのですが、その際の音質を決定する重要な機器が3つあります。

1つは「オーディオ インターフェイス」。もう一つが「マイクロフォン」。そして、最後に「スピーカー」です。

オーディオ インターフェイスとは、PCにUSB接続して音の入出力を処理する専用のディバイスです。PCに付いているマイクを使ってウェブ会議を行うのとは次元の違う、クリアで「伝わる」音声を届けることができます。

 

RME / Babyface Pro FS

 

RME Babyface Pro FS

ドイツのプロフェッショナル音響機器ブランドのRMEは、その正確な再生と安定したドライバーにより、世界中に多くのファンを持つブランドです。そのRMEの中でももっともウェブ会議に適したモデルがこのBabyface Pro FSです。

真ん中のジョグシャトルは、直感的にボリュームを変更することができますし、一時的にマイクの音声を小さくする(またはOFFにする)DIMボタンも付いています。そして、ここからが他のウェブ会議用のマイクにはない機能なのですが、このBabyface Pro FSは、小型のデジタルミキサーの機能も持っているのです。これはつまり、YouTubeやウェブブラウザーといったPC内のアプリやソフトウェアで再生した音声、または、iPhoneなどスマートフォンなど外部機器から再生される音声を自由にマイクの音声にミックスして、相手に届けることができるのです。さらに、マイクの音声を聞き取りやすくするためのEQやコンプレッサーという機能も内包していますので、ちょっとマイクの低音をカットして聞き取りやすくしたり、強弱の強すぎるマイクの音声をコンプレッサーで一定の音量に抑えたりすることができます。まさに、ウェブ会議に必要な機能が全て入っているオールインワンモデルです。さらに、PCとの接続は、USBケーブル1本で、電源も必要ありません。

そして、このBabyface Pro FSに接続するマイクロフォンとスピーカーとしておすすめなのが以下の2機種となります。

 

Austrian Audio OC818

Austrian Audio

このマイクの特徴は、指向性を切り替えることができるところにあります。

指向性とは、マイクが収音する方向のことです。単一指向性は収音するエリアが前面のみになりますので、一人や少人数の会議に最適です。また、双指向性を使うと、収音のエリアが前面と背面になりますので、向かい合ったレイアウトでの会議にぴったりですし、大人数の会議には、全指向性を使うと良いでしょう。

 

Genelec 8010

先ほどご紹介した4420A Smart IPスピーカーとルックスは似ていますが、こちらのモデルは、デスクトップでの使用に最適なシンプルモデルとなります。

8010のサイズは、H 195 x W 121 x D 116 mm(Iso-Pod™ 含む)となっており、デスクトップに設置するにも壁や天井に吊るすにも最適なモデルです。

GENELEC 8010A

また、デスクトップに設置した際も、付属のIso-Pod™ で、スピーカーに角度をつけられるので、大変便利です。

もちろんカラーも、先述のRALカラーの120色から自由に選ぶことができます。

接続には電源ケーブルと音声のケーブルが必要ですが、小さなボディからは想像のできない、クリアでラウドな音が出るため、ウェブ会議にはぴったりのスピーカーです。

 

 

*Genelecの8010はもう少しサイズが大きい8020や8030など、サイズのバリエーションがあります。部屋のサイズに合わせて適切なモデルをお選びください。

 

 

 

部屋の反射を改善する – Vicoustic

次に、部屋の反射の改善についてお話をしたいと思います。みなさんの会社の会議室の壁はどんな感じでしょうか? きっと石膏ボードなどの白くて硬い壁、もしくは、ガラスでできた壁が多いのではないかとおもいます。これらは、実は、音響的にはあまりよくありません。脳内で自動補正のおかげで普段そこで会話をしている分には余り気になることもない場合がありますが、壁やガラスはかなり音を反射しています。その様な反射の非常に多い環境で会議をおこない、その会議の音声をマイクで収録して相手先に届けているということになります。このブログの冒頭でお伝えしたことを思い出してください。マイクは脳内でのフィルター処理がかかっていない ”すっぴん” の「音」を収録しています。自分達は気になっていなくてもウェブ会議の相手先では、みなさんの声が壁に反射した音と共に届いてしまい、お風呂で喋っているような妙に響いた音になっていたり、さらには特定の周波数が打ち消しあって、随分と聞き取りにくく不明瞭な音声になっているのです。

下のビデオでは、音の反射をわかりやすく解説しています。ホームシアターでの反射に関してのシミュレーションですが、部屋のサイズを考えても会議室などでも同様の反射が起こっていますので、きっと参考になるはずです。

音源から直接鼓膜に届く音を「直接音」と呼びますが、音源は同時に天井や壁に反射します。これを「初期反射」と呼びますが、これらの音は、壁に反射し他時に形(音の波形)が変化しています。(ビデオでは、虹色で表現されています)そして、その初期反射音が、ダイレクト音と混ざって鼓膜に届くことにより、音が聞き取りにくなります。反射の多い会議室では、様々な反射が様々な方向で起こっており、会議室で音が聞き取りにくくなるのは、これらが原因であることがほとんどです。

この反射は、Vicousticの吸収と拡散を行うパネルをいくつか導入することで簡単に解消できますが、コツは、やりすぎないことです。もし壁の全面が吸音素材で覆われていると、部屋から全く反射音がなくなってしまい、逆に音声が通らなくなったり、息苦しく感じてしまったりします。部分的に吸音と拡散の処置をすることで劇的に会議室の音響を改善することができます。

 

どこに何を何枚貼れば良いのか?また、どの様にパネルを設置するのが良いのか?などなど、導入に関する疑問は専門スタッフよりご案内可能です。

 

Vicoustic 導入のご相談窓口

 

また、Vicousticではシミュレーションソフトを使った本格的なコンサルティングも行なっております。

ご興味のある方は、下記フォームに部屋の情報を書き入れていただき、ご気軽にご相談いただければと思います。

 

Vicousticについて相談する(フォーム)

 

微妙な声のニュアンスとビデオ映像が合わさることにより、距離を感じないナチュラルな会話を行うことができるようになり、ウェブ会議がより充実し、生産的になります。これからのビジネスには必須のアイテムとして、是非この機会にウェブ会議のシステムを見直してみてはいかがでしょうか。

 


使用機材

Vicoustic

Vicoustic

エレガントなデザインと機能性を両立したポルトガルの室内音響ソリューション・ブランド

Babyface Pro FS

RME Babyface Pro FS

12イン/12アウト 24bit/192kHzサポート USBバスパワー対応 プロフェッショナル・オーディオインターフェイス

OC818

Austrian Audio OC818

マルチパターン&デュアル出力コンデンサー・マイクロフォン

4420A

Genelec 4420A

Smart IPスピーカー。LANケーブルのみで接続可能。

8010A

Genelec 8010A

非常にコンパクトな筐体で持ち運びにも便利なスタジオ・モニター

バイノーラル再生とSOFAがもたらす未来

バイノーラル再生におけるソフトウェア処理

岡安 啓幸

どのような音でもバイノーラル化することができる

近年のスマートフォンやHMD(ヘッドマウントディスプレイ)の普及によってVRや360°動画はもはや珍しいものではなくなりました。そうした映像技術の発展と市場拡大に伴って「イマーシブ・オーディオ(3D音響)」のニーズもまた高まっています。

たとえば映画館のような音響システムであれば多数のスピーカーを用いて立体音場を作りますが、ヘッドホン/イヤホンが想定されるVRや360°動画ではバイノーラル再生を用いて立体音場を作ります。バイノーラル化した音源を製作するためのVSTプラグイン等は存在しますが、実際にバイノーラル音源を製作した方からは「定位が分かりづらい」、「音が悪い」などの不満も聞きます。

本記事では、人はどのようにして音源位置を把握しているのか等、バイノーラル再生の基礎を解説し、より良いバイノーラル・リスニングのための技術として昨今普及の兆しを見せてきているSOFAファイルフォーマットについても解説します。

またバイノーラルというとダミーヘッドマイクを想像する方も多いですが、本記事ではソフトウェア処理のバイノーラルプロセッシングについて解説します。

ダミーヘッドは立体音場の収録/再現方法としては優れた方法ですが、同時にこれは「現実的に収録可能な音しか扱えない」という制約でもあります。極端な例ですが、銃弾が耳元をかすめていく音が必要な場合、ダミーヘッドの耳元へ発砲しなければなりません。

また、ダミーヘッド収録音声の再生は収録時の音場再現ですので、録音後や再生時に定位を変更することはできません。つまり、ゲームやVRなどのユーザーの操作で定位が変わりうるケースには対応困難です。対してバイノーラルプロセッシングはソフトウェア上でバイノーラル化する処理であり、どのような音でも任意の定位を実現できます。再生時のリアルタイム処理も可能なので、ユーザーの操作による定位変化にも対応できます。

岡安啓幸

岡安 啓幸
プログラマー/楽器デザイナー
(有)山本製作所 研究開発部 副主任
国立音楽大学にてコンピュータ音楽、作曲を学ぶ。自身の創作で培ったデジタル信号処理技術を活かして、インスタレーション作品のサウンドプログラミングや音を用いた演出システム製作を行う。ハードウェア製造も行なっており、これまでに特注の電子楽器や博物館の展示用デバイスなどを手がける。
https://scrapbox.io/akiyukiokayasu/


 

HRTF概説

私たちはどのように音の位置情報を感じ取っているでしょうか?

キーワードとなるのは『HRTF(頭部伝達関数)』です。私たちの周囲で鳴った音は身体的形状により反射、回折が生じ、また音源位置に相当した時間差、音量差をもって耳に到達します。このような「周囲の音がどのようにして左右の耳に届くのか」を表したものがHRTFと呼ばれます。
私たちは音に含まれているHRTF情報を基に音源の位置を感じ取っているとされています。
つまりヘッドホン/イヤホンによるリスニングであっても、適切なHRTF情報を付加すれば任意の音源位置を感じさせることができます。このソフトウェア上でHRTF情報を付加する処理をバイノーラル・プロセッシングと呼びます。

SpeakerArrayHRTF情報を付加するためにはHRTFの測定データが必要です。
一般的にHRTFの測定は、無響室で小型マイクロフォンを両耳に装着して行ないます。無響室で行うのは部屋の響き等のHRTF以外の情報を排して行うためです。

そして被験者周囲の様々な箇所のインパルス応答を測定をします。そのインパルス応答が各座標に対応したものが『HRIR(頭部インパルス応答)』になります。 そしてHRIRを周波数解析したものがHRTF(頭部伝達関数)にあたります。

 

HRIR_HRTF

以下に音源位置によるHRTFの変化を示します。

左図はリスナーと音源位置を俯瞰したものです。緑色の丸が音源位置を表し、図の中心はリスナーを表します。音源位置の高さは常時耳の高さとします。

 

 

このように音源位置によって特性が大きく変わることが分かります。また音源位置が線対称の場合を比較すると、左右の耳の特性さえ大きく異なることが分かります。

これが音源位置を推測するための手がかりとなっており、私たちは普段それを聞き取って位置を把握していると考えられます。

そしてバイノーラルプロセッシングが行なっている主な処理は座標に対応したHRIRの畳み込みです。原理的にはコンボリューションリバーブ(IRリバーブ、サンプリングリバーブ)と同様です。

 

HRTFの個人性

私たちは指紋や瞳孔と同じように一人ひとり異なった頭部、上半身などの身体的形状を有しています。両耳間の距離が異なれば音が到達するまでの時間差が変化し、頭部形状が異なれば反射、回折によって周波数特性が変化します。

ダミーヘッドマイクのHRTFを用いてバイノーラルプロセッシング行なっているものもありますが、よく使われるダミーヘッドマイクは欧米の成人男性がモデルとして反映されていることが想像され、女性や子どもの頭部形状とは異なっていると思われます。 成人男性であってもアジア人の典型的な頭部形状とは異なっているかもしれません。

次に、下図にて、日本人の異なる成人男性2名のHRTFを左耳・右耳間でそれぞれ比較してみたいと思います。

身長や体格などがある程度似通った人物で比較しています。

 

 

周波数特性のノッチやピークの傾向は似ていますが、深さ、幅、周波数の全てに違いがあるのが認識いただけたと思います。
このように体格が大差ないように見える人物同士であってもHRTFには無視できないほどの差が存在します。20dB以上異なっている周波数も多くあり、完璧に一致するHRTFを持つ人物は存在しないのではないかと思えます。

 

HRTFの持つ高い個人性は音にどのような影響をあたえるでしょうか?

これは筆者の所感ですが、不適応のHRTFを用いたバイノーラルプロセッシングで問題になるのは、頭外前方定位のしづらさです。頭部後方への定位は多少自分のHRTFと異なっていても表現できることがままありますが、前方定位はHRTFの適応具合に大きく左右されます。また高さの表現も同様にHRTFに大きく左右されます。
また不適応のHRTFを用いたバイノーラルプロセッシングは正しく音が定位しないだけでなく、周波数特性の大きな変化や意図しない残響感など音質面でも悪影響を与えます。HRTFの周波数特性は大きなピークとノッチがあり、それが音質に与える影響というのは小さくありません。また原理的にはコンボリューションリバーブと同様なので、少なからず響きが付加されます。

では個人に適応したHRTFはどのように用意するのでしょうか?

前述したように、HRTFの測定は無響室など相応の設備が必要になるのはもちろん測定には長時間必要で手間もかかります。
近年ではCTやMRIなどを使用し作成した頭部の3Dモデルデータからコンピュータ上でHRTFを求める手法も使われますが、そちらも相応の設備が必要になることは変わりません。
残念ながら筆者もHRTF測定の経験はありません。しかしながら私に適応したHRTFファイルを所持しています。個人に適応したHRTFを得るソリューションについては後ほどご紹介します。

 


SOFA概説

HRTFについての研究は古くから行われてますが、研究者たちは測定したHRTFデータをどのように保存していたのでしょうか?

HRTF用の統一的なファイルフォーマットは数年前まで存在せず、独自の方法でそれぞれ記録していました。それではファイルのやり取り等に問題があることから、HRTF等の空間指向音響データのための標準的なファイルフォーマット『SOFA』の策定が数年かけて行われました。

2015年にSOFAはオーディオに関する国際組織Audio Engineering Society(以下AES)によってAES69として標準化され、HRTFを保存するフォーマットとして国際的に認められました。拡張子には「.sofa」が使用されます。
厳密にはSOFAはHRTFのためだけのファイルフォーマットではなく、空間情報を持った音響データ全般を記録することができます。しかしながらSOFAがHRTF記録のためのフォーマットとして普及しはじめている現状を鑑み、本記事ではSOFAのHRTF用ファイルフォーマットとしての側面について述べます。

それ以外の用途について詳しく知りたい方は、AESが発行しているSOFAの仕様書「AES69-2015: AES standard for file exchange – Spatial acoustic data file format」、もしくはSOFA関連情報を提供しているWebサイト「sofaconventions.org」をご覧ください。

SOFAは「伝達関数」と「メタデータ」を保存します。

バイノーラル用途の場合、SOFAはHRIRと対応した座標やサンプルレート、ライセンスなどのメタデータを1ファイルに記録するものとして考えます。

HRIRを利用してバイノーラルプロセッシングを行う場合、少なくとも、

  • HRIR
  • HRIRの座標情報
  • サンプルレート

の情報が必要です。これらは全て1つのSOFAファイルから取得することができます。

SOFAは気象系や宇宙系の研究者が扱うファイルフォーマットの資産を利用しており、大量のデータでも効率的に扱う仕組みができています。SOFA用のライブラリもC/C++, Python, MATLAB, Cycling’74 Max8などのプログラミング言語で準備されており、SOFAを利用するソフトウェアを作るのも比較的容易です。
また複数の機関がSOFAデータセットを公開しており、代表的なものは sofaconventions.org の Filesページにまとめられています。その中でも特に有益と思われるデータセットを以下に示します。使用にあたっては各データセットのライセンスをご確認ください。

どちらのデータセットも100人以上のHRTFが収録されています。The RIEC HRTF Datasetは頭部3Dモデルも一部公開されており、頭部形状とHRTFの関係性を知るための優れた資料です。ARI HRTF Databaseは測定点が細かく設定されているのが特徴です。

 

SOFAが音楽制作、VR/ゲーム開発にもたらすメリット

SOFAが標準化されたことで研究者のみならず、音楽制作者やゲーム開発者にとっても扱いやすくなりました。

たとえばサラウンド作品のミックスを行なっているとします。必要なチャンネル数のスピーカーをセッティングしてミックスするのがベストですが、いつでもそのような環境が用意できるわけではないと思います。そうした場合、バイノーラル再生を用いたヘッドホンモニタリングが便利です。しかし既存のバイノーラル再生ツールの質に満足できなかった人もいると思います。そうしたツールでは内部で使用するHRTFが固定のものもありますが、SOFAファイル読み込みでHRTFを切り替えられるものも存在します。
そうしたHRTF切り替え可能なバイノーラル再生ツールと自分に適応したSOFAファイルがあれば、ヘッドホンを用いたサラウンドミックスがよりやり易くなります。

以下に代表的なSOFA読み込み可能なプラグインを示します。

 

ゲーム開発の場合はどうでしょうか。

全てのプレイヤーに適応したHRTFをそれぞれ準備するのは難しく、プレイヤーは固定のHRTFで処理されたバイノーラル音声を聞くことになるでしょう。しかしながら音の定位がゲーム上のインフォメーションになっている場合があり、どれだけ定位を強調するべきかはそれぞれ検討する必要があります。
そうしたHRTFのチューニングともいえる作業にあたっても、SOFAファイルのHRTFを切り替えを利用すると素早く検討を進めることができるでしょう。sofaconventions.org もUnity用のネイティブプラグイン、SOFAlizer for Unityを開発しています。

 

将来的な展望

以上は製作者にむけたメリットでしたが、ユーザー視点では今後どんな展開が考えられるでしょうか。

スマートフォンの高性能化やWebブラウザ上でオーディオアプリケーションを動かす環境が整いつつあるため、スマートフォンやブラウザ上でのバイノーラル再生も遠くない未来に広く普及するのではないかと考えています。バッテリー内蔵のワイヤレスヘッドホンが広く普及した今、モーションセンサーも内蔵することでヘッドトラッキングも含めたバイノーラル再生が誰でもできるようになることを期待しています。
そのためには個々人に適応したSOFAファイルは必要になりますが、個人に適応したSOFAファイルを入手するソリューションが出てきています。それが、次に紹介する「Aural ID」です。

 

Aural ID

「Aural ID」はスマートフォンで上半身、頭部、耳を撮影すると個人に最適化されたHRTFが記録されたSOFAファイルが入手できる、Genelecがオンラインで提供するサービスです。

Aural ID 詳細

 

これまで無響室で行なっていたHRTF測定がどこでもスマートフォンのカメラ撮影だけで可能になります。
撮影はこのように頭部、肩周り全体が映るように行います。

 

*Aural IDは、音の到着方向に関する情報を扱う全ての人にとって必要なものです。潜在的なユーザの例としては、仮想現実(VR)および拡張現実システム、ゲーム・プロセスの一部としてオーディオ表現を動的に計算するゲーム・エンジン、および3Dオーディオを扱う研究者が挙げられます。

 

バイノーラルとSOFA:3Dmodelスマートフォンで頭部を撮影し、アップロードするとサーバー上で頭部の3Dモデルが作成され、シミュレーションを用いてHRTFを算出します。ユーザーはそのHRTFが記録されたSOFAファイルを利用できます。

このように、これまでハードルの高かったHRTFデータの入手がとても簡単に行えるようになりました。
筆者もAural IDで作ったSOFAファイルを用いたヘッドホンモニタリングを行なっています。実際これまで使ってきたHRTFよりも綺麗に頭外前方定位をしています。前後に空間をもって定位してくれるお陰で、歪みの少ない球状の立体音場が作れています。

 


SOFA Binaural Player

SOFAを用いたバイノーラル再生が手軽に行えるソフトウェア『SOFA Binaural Player』をCycling ’74 Max 8を用いて作成しました。
SOFA Binaural PlayerはSOFAファイルとWAVEファイルをドラッグ&ドロップすると、そのHRTFを用いたバイノーラル再生を行います。

 

1. SOFAバイノーラル・プレイヤーをダウンロード

以下のボタンより、ソフトウェア『SOFA Binaural Player』をダウンロードします。

MaxパッチをDL

 

2. アプリケーションをインストール

SOFA Binaural Playerの実行には最新のMax 8IEM Plug-in Suiteが必要です。リンク先の指示に従ってインストールしてください。

 

Max 8のインストール:

リンク先のページの一番したにある「Maxインストーラーをダウンロード」というセクションから、ダウンロードを行い、アプリケーションを起動します。

 

IEM Plug-in Suite のインストール:

ダウンロードしたプラグインを下記のフォルダに保存してください。

macOS:/Library/Audio/Plug-Ins/VST or ~/Library/Audio/Plug-Ins/VST
Windows: C:\Programm Files\Steinberg\VstPlugins

 

3. パッチを開く

SOFABinauralPlayer.maxzipを開くと、以下の画面が表示されます。

バイノーラルとSOFA;SOFABinauralPlayerOverview

正しくIEM Plug-in Suiteがインストールされていると画像下の2つ、Stereo EncoderとSimple Decorderも立ち上がります。

 

4. 設定ファイルを読み込む

まずSimple Decoderに設定ファイルを読み込ませる必要があります。Simple Decoderの「Load configuration」ボタンを押し、フォルダ内の8chCube.jsonを読み込みます。

バイノーラルとSOFA:SimpleDecoderLoadConfig

SOFA Binaural Playerではステレオファイルを一度アンビソニックエンコードした後に、仮想のキューブ状サラウンドレイアウトにデコードします。その後、HRTFの畳み込み処理を行いバイノーラル化して出力しています。そのSimpleDecoderはそのサラウンドデコード部分で使用しています。

 

5. オーディオファイルを読み込む

ステレオのオーディオファイル(WAV/AIFF/MP3など)を「Drop audio file here!」にドラッグ&ドロップします。

 

6. SOFAファイルを読み込む

Aural IDでSOFAファイルを作成された方はSOFAファイルを「Drop SOFA here!」にドラッグ&ドロップします。お手元にSOFAファイルがない方は同梱されているサンプルSOFAファイルをドラッグ&ドロップします。

サンプルSOFAファイルは、2種類用意してあり、共に日本の成人男性のSOFAファイルとなります。

ご自身の耳に最適化されたHRTFが記録されたSOFAファイルではありませんが、AとB、2種類の異なるSOFAファイルを「体験」することができます。

 

7. 詳細設定

必要に応じてSOFA Binaural Player内の歯車マークをクリックしてオーディオ設定を開き、オーディオ出力、サンプルレートなどを調整します。

 

8. 再生

再生ボタンを押すとバイノーラル化された音声が出力されます。

 

9. 音を動かす

音像移動はStereo Encoderの「Azimuth」と「Elevation」を用いて行います。ステレオ幅は「Width」で調整することができます。Elevetionは0°でAzimuthを変化させると耳の高さで360°音が回るのが確認できるはずです。

バイノーラルとSOFA:IEM Plugin

Stereo Encoderのパンナーは、360°球体面を上から見た形で表示されています。Frontが前方、Backは背後となります。

高さ方向の調整は、Elevstionノブで行います。値がマイナスになりますと、音像は、球体の下半分(下半球)に移動したことになり、音像位置を表す白いアイコンが、Rと書かれた赤い小さいアイコンに変化します。もちろん、この白いアイコンを直接マウスで掴み音像を動かすことも可能です。

 

 


まとめ

HRTF、SOFAの概要とAural IDとSOFA Binaural Playerによる実践をご紹介してきました。

バイノーラルの古くからの研究は近年急激に結実してきたように感じています。ですが、まだバイノーラルを上手く活用できていないとも同時に感じています。基礎的な知識を身につけることはもちろん重要ですが、バイノーラルを上手く活用するため製作者が経験を積むこと、よく聴く姿勢がなによりも重要です。

本記事がバイノーラルへの理解、よりよく聴くためのきっかけになることを望んでいます。

 


Aural ID

バイノーラルとSOFA:Genelec Aural IDヘッドフォン・モニタリングを再定義するソフトウェア・テクノロジー「Aural ID」。発表当時の文書をご覧頂けます。

プレスリリースを見る

 


InterBEE 2019

2019年11月13日~15日に幕張メッセで開催された、「InterBEE 2019(国際放送機器展)」に出展いたしました。
執筆者・岡安氏の公演の様子や、その他のワークショップ・レポートは以下よりご覧頂けます。

レポートを見る

イマーシブ オーディオとは?

「イマーシブ オーディオ」とは何でしょうか? イマーシブ オーディオ の基本概念から、方法論やアプローチの違い、さらにはフォーマットの違いとそれぞれの特徴を、判りやすく簡単にまとめてみました。

 

イマーシブ オーディオの概要

まず「イマーシブ オーディオ」を英語表記すると下記のようになります。

英語表記:Immersive Audio

Immersiveというのは、「没入感」という意味です。

つまり「イマーシブ オーディオ」とは「没入感の高いオーディオ」という意味になります。

一般的には、たくさんのスピーカーを配置したり、ヘッドフォンでの再生でも特殊な処理を行うことにより、360度、全方位から音が聞こえるコンテンツを「イマーシブ オーディオ」と呼んでいます。「立体音響」「3Dサラウンド」「Spacial Audio」など様々な呼び名がありますが、基本的に全て同義語と考えて間違いありません。

 

「イマーシブ オーディオ」が、「立体音響」「3Dサラウンド」と呼ばれることがあるということは、つまり「イマーシブ オーディオ」とは、「サラウンド」の一手法ということもできます。

いままでの「サラウンド」というと、5.1や7.1といった平面にスピーカーを配置したいわゆる「2Dサラウンド」でしたが、「イマーシブ オーディオ」すなわち「3Dサラウンド」は、上層部にもスピーカーを配置し、空間に半球面や全球面を表現する立体的なサラウンド手法となります。

 


 

イマーシブ オーディオ:主な方法論

イマーシブ・オーディオには、主に、3種類の「方法論」があります。

  1. チャンネル・ベース
  2. オブジェクト・ベース
  3. シーン・ベース

以下に、それぞれの方法論を簡単に解説します。

1. チャンネル・ベース

事前に想定される出力チャンネルの数に合わせた形で音声をあらかじめ制作し、それぞれのチャンネルを対応する各スピーカーから再生する方式。過去の2チャンネルステレオ作品や、5.1ch/7.1chといったサラウンドも全てこの方式です。
サンプルレートなどの制限もなく、ハイレゾリューションでの再生も可能。収録を行なった場所(コンサートホールやライブ会場など)の音場をそのまま再現したい場合に効果的で、“聴かせるための音”=音楽の再生に向いていると言えます。

2. オブジェクト・ベース

音源に「位置情報」を持たせ、各スピーカーからどのような音を出すかというパンニング情報をリアルタイムに計算(レンダリング)して再生する方式。例えば、ヘリコプターの音、車のクラクションと言った、動きを伴う映画の効果音に対して有効です。それぞれの音を「オブジェクト」として捉え、それぞれのオブジェクトがどのように動き、音量がどのように変化するかというデータを音声情報に含ませます。
再生時には、アンプなどの機器側で、スピーカーの位置や数にあわせて最適なレンダリングを行い再生します。そのため、再生時のチャンネル数=スピーカーの数に依存しない制作が可能。制作時にはDolby AtmosやAuro MAXと言った特定のフォーマットを使いエンコードを行う必要があり、逆に再生時には、それぞれのフォーマットに対応したAVアンプなどが必要になる。なお、オブジェクトベースは、純粋な音楽コンテンツの再生よりは、映画の効果音など音が空間を移動するような表現に向いていると言われています。

*Dolby AtmosやAuro MAXは、実際には、チャンネル・ベースとオブジェクト・ベースの両方を使用する「ハイブリッド型」です。

 

3. シーン・ベース

チャンネル・ベースとオブジェクト・ベースは「心理音響的アプローチ」。対してシーン・ベースは「物理音響的アプローチ」となり、リスナー=マイク位置を取り巻く、その空間全体の物理情報を記録再生する方式です。
Wave Field Synthesis(ウェーブ・フィールド・シンセシス)や、Ambisonics(アンビソニックス)といった方式がこれにあたり、最近では、VRなどの音響に使われることが多いAmbisonicsが大変脚光を浴びています。

 

それぞれの方法論には、長所短所、そして特色がありますが、現場やコンテンツに応じてそれぞれの方法論を使い分ける、もしくはコンビネーションして使うことが成功への近道となります。

 


 

イマーシブ オーディオ:主なフォーマット

イマーシブ・サラウンド市場には、現状、いくつかの標準フォーマットが存在しています。ここでは、一般的に耳にすることが多い、3種のフォーマットをご紹介いたします。

  • NHK 22.2 マルチチャンネル音響
  • Dolby Atmos
  • Auro 3D / Auro MAX

*上記の他に「DTS:X」というオブジェクトベースの規格もありますが、ここでは説明を割愛いたします。

 

NHK 22.2 マルチチャンネル音響

チャンネル・ベースの再生方式。スピーカーは上中下の3層構造になっており、その名の通り22本のスピーカーと、2本のSubWooferで構成されています。
 

Dolby Atmos

オーディオには48k/24bitを使用し、それをさらにDolby Atmosフォーマットでレンダリングします。ハイサンプルレートも使えるその他のフォーマットと比べると、多少音質面での見劣りはありますが、日本ではもっとも有名な商用フォーマットです。先述のように、チャンネル・ベースとオブジェクト・ベースの両方を使用する「ハイブリッド型」で、映画や音楽のコンテンツ没入感を高めるために使用されます。
 

Auro 3D / Auro MAX

現状、主にヨーロッパで主流のフォーマットです。チャンネル・ベースの「Auro 3D」と、それにオブジェクト・ベースを足した「Auro MAX」というフォーマットが存在しています。Auro 3Dは、現状96kHzのサンプルレートに対応しているので、より高音質なコンテンツ再生に適しています。
 
Dolby AtmosとAuro 3Dの音質比較を簡単に行うには、イマーシブ・オーディオのリファレンス音源集「BLOOM OF SOUND」シリーズが最適です。

 

Ambisonics

上記の他、シーン・ベースの「Ambisonics」があります。Ambisonicsは特定の協会や企業が提唱しているフォーマットではなく、オープンソースの方法論ですので、誰でも無料で利用することが可能です。チャンネル・ベースの良い部分もオブジェクト・ベースの特徴も内包しており、さらに、音場全体を回転させることができるという特殊な機能も持ち合わせているので、昨今ではVRゲームの音声や、自動車の車内音響として実装や実験が盛んに行なわれています。

Ambisonicsとは?

イマーシブ制作の基礎知識と3Dフィールド録音の実践:Florian Camerer氏

オーストリア放送協会のサウンドエンジニア、フローリアン・カメラー氏による講演。イマーシブ オーディオの主要な方法論とワークフローを初心者にもわかりやすく解説。また、カメラー氏が考えるフィールド・レコーディング時におけるマイクシステムの構築に関するノウハウが紹介された。

 

MI7グループ主催のセミナーイベント「Media Innovation Workshop vol.2」

「最先端の音響で、全てのビジネスを一歩先へ。」

第2回目となる2019年5月、イマーシブ・オーディオ(立体音響)に関するワークショップが国内3箇所で開催された。

 

「なぜイマーシブ・オーディオに取り組むべきなのか?」

2Dから3Dへの発展で、よりエンタテイメント性が高まる。私たちは常に360°の聴覚を持っているため、それを表現するのは至極自然な流れである。例えば、近い将来、電気自動車の普及による静音化、そして、自動運転が搭載された車内では、イマーシブ・コンテンツを日常的に楽しむ世界がくるだろう。

 

車内

 


MI7グループ主催のセミナーイベント「Media Innovation Workshop vol.2」

「最先端の音響で、全てのビジネスを一歩先へ。」

第2回目となる2019年5月、イマーシブ・オーディオ(立体音響・没入型サラウンド)に関するワークショップが国内3箇所で開催された。

現在、音楽だけなく様々な業界でニーズが高まっている「イマーシブ・オーディオ」。今回は、イマーシブの現場の最前線で世界的に活躍される3名が登壇された。

ORFオーストリア放送協会のフローリアン・カメラー氏、”サラウンド将軍” Mick沢口氏、そして、日本初のAmbisonicsアルバム制作者 江夏正晃氏。各講師より、イマーシブに関連する基礎知識や録音/再生技術、また制作した作品の紹介や、より実践的なノウハウについてお話し頂いた。

 

ワークショップ詳細

 


講師

Florian Camerer

フローリアン・カメラー

ORFオーストリア放送協会 サウンド・エンジニア
EBU PLOUDグループ 代表
AES(Audio Engineering Society) メンバー

ウィーン・ニューイヤーコンサートの録音エンジニアとしても活躍。1990年にオーストリア放送協会(ORF)に入社。1995年、プロダクションサウンドとポストプロダクションの分野でスタッフサウンドエンジニア(トーンマイスター)として就任。彼はDolby Surroundにおける初のORFプログラム “Arctic Northeast”をミックスし、以降ORFでのマルチチャンネルオーディオの各方面に携わる。 2008年秋、EBUグループPLOUDの議長に着任。ヨーロッパで、ピークレベリングの代わりとなるラウドネス正規化の導入に成功する。現在、特にイマーシブ・オーディオ(3Dオーディオ)を含むラウドネスとサラウンド音響に関するプレゼンと講演を、国際的に行っている。

 


 

目次

目次

セッションの始めに、さっそく楽曲を視聴。カメラー氏が4-5年プロデュースしている「ウィーンフィル・ニューイヤーコンサート」の3D録音が、映像付きの9.0chで再生され、まるで自分がニューイヤーコンサートの会場にいるかのような、包み込むような臨場感。その圧倒的な没入感から、ワークショップはスタートした。

 

曲目:ラデツキー行進曲(ヨハン・シュトラウス1世 作曲)
収録場所:ウィーンフィル・ニューイヤーコンサート(ウィーン楽友協会 大ホール)
フォーマット:Auro 3D(9.0ch / Blu-ray Disc)

Blu-ray詳細
https://www.sonymusic.co.jp/PR/new-years-concert/discography/SIXC-20

 

 


 

イマーシブ・オーディオのアプローチとフォーマット

イマーシブ・オーディオの方法論は、大きく分けて2種類あり、それぞれの方法論において様々なカテゴリーによるアプローチが可能となる。

 

1.音響心理学に基づいたアプローチ

  • チャンネル・ベース
  • オブジェクト・ベース

 

2.物理的な音場再構築に基づいたアプローチ

  • シーン・ベース
  • 波面合成
  • バイノーラル

 

その中でも一般的なものは「チャンネル・ベース」「オブジェクト・ベース」「シーン・ベース」の3種類。それぞれ異なる手法について、「制作(Production)→配信(Distribution)→再生(Playback)」それぞれの段階における違いを、次に解説する。

方法論

 

【A】チャンネル・ベース

オーディオ・ファイルがそれぞれの再生チャンネルに紐づいた形式。長年の歴史を持つフォーマットであり、近年まで盛んに行われてきた2ch形式の録音・ミックスや、5.1や7.1サラウンドのミックスは、すべてこのチャンネル・ベースである。制作(Production)の段階で、再生時(Playback)の形式、つまり「スピーカーの本数や配置」を決める必要があるということが最大の特徴だ。再生時のユーザー環境に添うように、必要に応じて異なるミックスを複数制作しなくてはならない。

チャンネル・ベース(Preview)

 

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アンビソニックスを始めるのには、特別な専用マイクも、高価な機材も必要ありません。必要なのはいつものオーディオファイルと、オープンソースのVSTプラグイン「IEM Plug-in Suite」、あとはヘッドホン(スピーカー)だけ。たったこれだけで、誰でも簡単にアンビソニックス・コンテンツを作ることができます。

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Ambisonics(アンビソニックス)とは?

今話題のAmbisonics(アンビソニックス)の、概要と製作方法を簡単に説明します。

アンビソニックスを知りたい方、制作を始めたい方必見。

 

VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)、360度ビデオなど新しい体感型コンテンツの普及にともない、 音楽やサウンドにも同様の表現力が求められており、今まさに様々な試みが行われています。

サラウンドに高さの表現を追加しサウンドに包み込まれる立体的な音響を再現するイマーシブ・オーディオ、立体音響をヘッドフォンで聞くことのできるバイノーラルなど、様々な再生方法やそれらを実現するテクノロジーが開発され、私たちの身の回りでも採用が進んでいます。

その中でもYouTubeやFacebookに採用された「Ambisonics」(アンビソニックス)が現在大きな注目を集めています。

アンビソニックスを簡単に説明すると、次の3点に集約することができます。

  • アンビソニックスとは、イマーシブ3Dオーディオのフォーマットの一種
  • アンビソニックスでは、360°球体の音場で、録音と再生が可能
  • アンビソニックスは、シーンベースのフォーマット

アンビソニックスとは、イマーシブ3Dオーディオのフォーマットの一種

「イマーシブ」(Immersive)とは、日本語では「没入」とか「没入型の」と翻訳されます。つまりイマーシブ3Dオーディオでは、一般的なステレオやサラウンドでは得られない高い「没入感」に浸ることができます。

またアンビソニック以外の著名なイマーシブ3Dオーディオのフォーマットとして、ハリウッド映画で広く採用されている「Dolby Atmos」「DTS:X」、ヨーロッパで開発され音楽コンテンツのリリースが多い「Auro-3D」などがあります。

アンビソニックスでは、360°球体の音場で、録音と再生が可能

Ambisonics(アンビソニックス)とは?Ambisonic制作用デコーダープラグイン:IEM Plug-in Suite / AllRADecoder

一般的なステレオ再生の場合、リスナーの前面から再生される平面的な音場ですが、5.1chや7.1chのサラウンドになると、リスナーを360°取り巻くようになります。さらに「Dolby Atomos」や「Auro-3D」といった3Dサラウンドの場合は、高さを加えたドーム型の半球面に音場が広がります。そしてAmbisonicsでは、360°全球面となり、リスナーをすべて包み込む球体が完成します。

アンビソニックスは、シーンベースのフォーマット

「シーンベース」(scene-based)とは何かを理解するためには、イマーシブ3Dオーディオ以外のフォーマットについて少し説明する必要があります。

イマーシブ3Dオーディオには、大きく分けて以下の3種類の方式があります。

  • チャンネルベース
  • オブジェクトベース
  • シーンベース(Ambisonics)

チャンネルベース

Ambisonics(アンビソニックス)とは?:Ambisonic制作/チャンネルベースのイメージ図

チャンネルベースとは、再生システム内のそれぞれのチャンネルに1:1で対応する再生方式です。

2台のスピーカーをつかって表現を行うステレオフォニックもチャンネルベースです。録音の段階から2台のスピーカーで再生することを想定し制作が行われています。
ステレオだけではなく、5.1chや7.1chといったサラウンドも基本的にはチャンネルベースで制作され、もちろんイマーシブサラウンドでもチャンネルベースの考え方を使うことができます。

主要なイマーシブ3Dオーディオのフォーマットである、NHKの22.2chマルチチャンネル音響や、ヨーロッパを中心に人気のあるAuro-3Dなどは、このチャンネルベース方式を使ったフォーマットとなります。

オブジェクトベース

Ambisonics(アンビソニックス)とは?:Ambisonic制作/オブジェクトベースのイメージ図

オブジェクトベースとは、音源(音声信号)の他に音響メタデータを付随させリアルタイムに各スピーカーからの出力する音を計算して再生する方式です。

例えば頭上を通過するヘリコプターの音のような動きを伴う効果音に対して有効で、それぞれの音を「オブジェクト」として捉え、オブジェクトがどのように動き、その結果音量がどのように変化するかをスピーカーレイアウトにあわせてデコードを行い再生します。

Dolby Atmosでは、オブジェクトベースとチャンネルベースの両方を使ったフォーマットです。

シーンベース

Ambisonics(アンビソニックス)とは?:Ambisonic制作/シーンベースのイメージ図

シーンベースは、リスナーを取り巻く空間全体の物理情報を360°の全天球空間に記録再生する方式です。

シーンベースに属するAmbisonicsでは、マイクを使ってその空間の音場(アンビエンス)のすべてを360°の球体の中に取り込むこともできますし、個別に収録した音を自由に球体の中に配置し、オブジェクトベースのように自由に動かすこともできます。

またAmbisonicsの最大の特徴は、それぞれの音の動きや位置を球体の中に有したまま、その球体を自由に回転させることができます。この特徴によりVRコンテンツや360°動画などの音響として使われることが多い方式となっています。

Ambisonicsはスピーカーレイアウトに依存せず、チャンネルベースを含まないため、どのようなスピーカーレイアウトであっても1つのAmbisonicsフォーマットのファイルで対応することができます。

Ambisonics(アンビソニックス)とは?:Ambisonic制作/ワークフロー

High Order Ambisonics

FacebookやYouTubeなどに採用されたことでAmbisonicsの音源を聴く環境が増えつつありますが、多くのAmbisonics音源はFirst Order Ambisonics、日本語では「1次アンビソニックス」と呼ばれるものです。

1次アンビソニックスでは全方位から聞こえる0次アンビソニックス(下図のW-channel)に水平方向、垂直方向、そして奥行きが加わります。

Ambisonics(アンビソニックス)とは?:Ambisonic制作/1次アンビソニックス

この状態でも上下・左右・前後という3次元の位置情報があるため、360度球体音場の再現は可能です。

ただしAmbisonicsの最大の特徴でもある音の動きや、球体音場の回転などを伴う場合ではそれぞれのチャンネル*の隙間が生じてしまい、音像の位置再現性が落ちてしまいます。
* ここでのチャンネルは、スピーカーの数ではなく空間を埋める方向とお考えください。

この問題を解決するのがHigh Order Ambisonics(通称:HOA)、日本語では「高次アンビソニックス」と呼ばれます。

IEM Plug-inを使用してAmbisonicsを制作するチュートリアルをご確認いただけます。

IEM Plug-in Suiteとは?

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