柏市立柏高等学校

吹奏楽部における練習の効率化とICT活用

2018(H30)年の文化庁による「文化部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」策定後、吹奏楽部では練習のあり方が大きく変わりつつあります。

高度な演奏技術の習得には長時間の練習が必要との見方から、休日も部活動に充てることが以前は一般的にみられました。しかし練習時間に上限が設けられた今日では、限られた時間内で最大の成果を挙げるため、練習の効率化が大きな課題となっています。

本稿では、練習の効率化を助けるICTソリューションの一つとして、 柏市立柏高等学校 によるFinaleの活用事例をご紹介します。

“吹奏楽の甲子園”とも言われる「吹奏楽コンクール全国大会」の金賞受賞の常連校で、激戦区の東関東エリアでも屈指の強豪である同校は、そのユニークな練習方法でも知られており、オリジナル練習素材をFinaleを用いて制作・管理しています。

 


 

1. 吹奏楽部では、オリジナル練習素材の制作をFinaleで

Finaleを用いて練習素材を作成・管理する主なメリットには、以下が挙げられます。

  • 出版譜クオリティの美しい楽譜を、パソコン1台で素早く作成できる
  • 音符のコピー&ペースト、ピッチの一括変更など編集が容易のため、例えば同じフレーズを各楽器の音域や移調設定に合わせて変えた別バージョンを作ることも容易である
  • 楽譜をPDFに、プレイバックをmp3等に書き出し、オンラインでシェアできる

 

市立柏高等学校では、初代顧問で現在は著名な吹奏楽指導者としても知られる石田修一氏が、総監督としてその年度ごとのバンドの状況に応じてオリジナルの練習素材をアップデート、現役の顧問がそれをFinaleを用いて管理しています。

練習素材は、聴音やスケールなど基礎的なものから、個人練習用、パート練習用、全体練習用など、さまざまなものがあり、これらのFinaleファイルは代々の顧問に受け継がれ、長年に亘り継続的な進化を遂げています。

柏市立柏高等学校 | Finale製のオリジナル教材
Finaleで制作されたオリジナル教材の一例

また、2020年のコロナ禍による休校期間中は、Finaleで電子ファイルとして作成した楽譜や参考音源をGoogle Classroomを用いて生徒にシェアしました。

 

「練習素材については、Finaleファイルとして作成・管理していることで、時々のバンドの状態に応じてアップデートしたり、別バージョンを作り易いですね。また、楽譜を参考音源と共に電子ファイルとして生徒にシェアするのも、紙やCDといった物理メディアより容易です。実際に2020年のコロナ禍による休校時には、Google Classroomを介してそれを行いました。」

 

2. 楽譜をFinaleファイル化すれば、面倒な移調作業も数秒間で、正確に可能

吹奏楽部で楽譜を取り扱う際、移調は頻繁に発生する作業です。手書きの楽譜では全て描き直しとなり、ミスも発生しがちな移調作業も、ひとたびFinaleに打ち込んでしまえば、曲の長さに関わらず、数秒間で、ミスなく正確に行うことができます。

 

「市販楽譜の場合はデータがなく、移調作業は膨大で顧問だけでは対応できないので、生徒に行ってもらっています。しかし、手書きでの移調作業はかなり手間で、実のところ生徒にとっては難しく、時間が相当掛かる上に、間違いもかなり多いです。」

 

「Finaleデータ化してしまえば、移調は簡単に、早く、しかも間違いなくできます。生徒が自由に使えるパソコンがあれば、生徒もFinaleを使えるようにすることで、こういった負担はかなり減りますし、効率化も進むと思います。」

 

柏市立柏高等学校 | Finale教材での指導風景
Finale使用環境があれば、移調作業などは大幅に効率アップに繋がる

 

3. ICTの一層の導入で、Finaleの活用可能性は広がる

生徒1人1台のICT端末導入は現在、義務教育から進められており、数年後には高校でも導入が開始されると言われています。市立柏高校では現在、吹奏楽部活動の他に音楽授業でもFinaleを活用していますが、生徒用の端末が導入された後は、創作の授業にもFinaleを導入していきたい意向です。

 

「Finaleには膨大な量の教育用ワークシートが付属していますので、この中からいくつか選んでカスタマイズし、テスト問題を作ることがありますね。あと、教科書に載っている曲をFinaleに打ち込み、生徒の音域に合わせて移調したり、ミュージック・ベルの演奏時に教科書に掲載された曲が音幅が広すぎて対応できない場合、音を変えたり移調したりして楽譜を作り直しています。」

 

「今は創作の授業で生徒たちに短い作曲をさせたりする時、手書きで楽譜を書かせていますが、実際に演奏してみるまでどんな音が流れているかさっぱり分からない状態で書いているというのが現状です。しかしFinaleを使えば、入力音が聞けたりプレイバックできたりと、作曲も格段に行い易くなります。」

 

 


 

インタビュー協力

宮本 梨沙
千葉県出身。小学校5年生からトランペットをはじめ、柏市立柏高等学校を卒業後、東邦音楽大学へ進学。トランペットを藤井完、加古勉、J.バンマーの各氏に師事し、「7人のトランペット奏者によるソロ曲集Vol.4」に収録。卒業後、楽器を通じて教育の場に携わり、母校である大津ヶ丘中学校に着任。東日本吹奏楽コンクールへ出場し、金賞を受賞している。現在は、もう一つの母校である、柏市立柏高等学校で音楽と吹奏楽を教えている。

坂本 恵利
小学校3年の頃より千葉県に在住。中学校からクラリネットをはじめ、柏市立柏高等学校を卒業後、東邦音楽大学へ進学。クラリネットを磯部周平氏に師事。卒業後は、母校である柏市立柏高等学校をはじめ柏市の小中高等学校で勤務している。また、一般の吹奏楽団CHIBA TRAIL BLAZERSに所属し、演奏活動も続けている。

(協力:株式会社プリマ楽器

 


 

製品詳細

MakeMusic Finale

世界標準の楽譜作成ソフトウェア


 

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