ライブレコーディングの現場で「今」求められているもの:村上 輝生

MADI/DANTEに関わる現場の「生のTips」を

TOTOのアルバム”FAHRENHEIT”でGold Diskを獲得したエンジニア、村上輝生氏が考える「今」ライブレコーディングの現場で求められているものとは?

ライブレコーディングを取り巻く環境、MADIやDanteの解説に始まり、高品位かつ安定した録音システムをどのように構築し運用しているのかの解説、また、DanteなどIPプロトコルとMADIの連携方法や、アンビエンスマイクの紹介まで、実際の現場から産まれてきた「生のティップス」を、エンジニア視線で紹介された貴重な公演。
ライブレコーディングを行なっているエンジニアだけではなく「録音」全般に関わる全ての関係者必見の内容です。

Mu Murakami

登壇者

村上 輝生 Teruo “Mu-” Murakami
フリーランスエンジニア

1955年1月生まれ。大阪芸術大学出身、1977年大学卒業と同時に財団法人ヤマハ音楽振興会入社。EPICURUSホールのPAエンジニアを担当。翌年先輩エンジニアに引っ張られてスタジオ入り、アシスタントとして修業を積み80年からEPICURUSスタジオのハウスエンジニアとして働く。1985年、スタジオを休職して単身渡米、LAにてTOTO、ドンヘンリー等を手掛け、TOTOのアルバム”FAHRENHEIT “でGoldDiskを獲得。帰国後、1986~1995までエピキュラススタジオのチーフエンジニアを務め、その後ヤマハ音楽研究所にて音、映像、MIDI、通信を融合した遠隔セッションや三次元リバーブの研究などを経て1999年に45才で独立。その後、フリーランスエンジニアとなり現在に至る。J-POP、JAZZ、クラシック、ゲーム音楽等、幅広くこなしながら国内外で精力的な活動を続けている。

 


【村上】

昨今、ライブ市場が非常に活性化しています。ライブレコーディングの規模もシステムも多様化し、コンパクトなシステムが普及。「大規模な映像収録がある際は必ずライブレコーディング」といった流れがあり、今後もこの勢いは続きそうです。

 

【村上】

現場では、常に「コンパクト」で「安定した」システムが求められている。 そして、素早くセットアップを行うことができるというのも非常に重要なファクター。 FOHやFBと一緒に行うべき回線チェックに、自身の機材のセッティングが間に合わないなんてことがないように、コンパクトで設営が早いシステムが望ましと考えています。

 

【村上】

MADIはざっくり言うと、よく見かける2chや8chのAES/EBUと同じデジタル信号を束ねて、たった1本のケーブルで最大64Chの信号のやりとりが可能な非常に優れたデジタル・オーディオの規格です。

 

【村上】

約30年前の規格ながらライブ機器関連では未だにメジャーなフォーマット。

接続にはコアキシャル(75Ωの同軸ケーブル)、または光ケーブルを使用します。

 

【村上】

MADIは、IP系の伝送規格とは違い、アナログと同様の入力とか出力の概念が通用するのでわかりやすい。

基本的にMADI規格に対応した録音機やIFではステージボックスに入った信号が同じ順番で受信出来ると考えれば良いです。

Zepp系、LIQUIDROOM、O-East、O-Westなど大箱を始め、中小のライブハウスでも、DiGiCo、SSL、SoundCraft、Avid等のライブミキシング用デジタルコンソールが使われており、その多くにはMADI端子が搭載されています。

また、一般的に広くつかわれているDante仕様のYAMAHAのデジタル卓でも、スロットにMADIボードを搭載すればMADI接続も可能で実際に搭載されている例も多数ある。

 

【村上】

一言で言えばPAに迷惑をかける可能性がゼロ。これは非常に重要なこと。

MADI対応機器であればクロックさえ間違わなければ繋ぐだけで必ず音が来る。これはとても大きなメリットです。

DanteのようなIP伝送の場合、ルーティングの自由度も高く、利便性も非常に高いのですが、ちゃんとルーティングしなければ何も音は来ません。

IP系のデメリットは自由度が高い分PAも含めたシステム全体の安全性の確保が難しいのと、FOH卓に直接入力したものを録音する場合はFOH卓側での設定が必要でFOHエンジニア側にもDanteの知識が必要な事です。

 

【村上】

Danteの開発元Audinate社のWeb上のトレーニングビデオ(日本語も有り)で最低でもレベル2までの試験に合格出来ないレベルだとヤバイかもしれません。

レベル1の試験は知識テストのみ。 レベル2だと知識テストとオンライン上のバーチャルシステムで実地テストがあります。 合格すると「Certified」の証書が贈られます。

 

【村上】

極端な話、1UのMADI対応の簡易レコーダーにMADIケーブルをつないで録音ボタンを押せば誰にでもライブ レコーディングが可能です。

が、僕の場合は、より良い結果を得るため、オーディエンス マイク用に高品位のマイクプリを使用し、オーディオ インターフェィスとDAWを使って収録します。

RMEのMicstasy(ミクスタシー)は音質もダイナミックレンジも素晴らしいマイクプリですがそれだけではありません。 オプションスロットにMADIカードを搭載でき、それによりMADI Recordingが格段に楽になります。

例えばDiGiCoは56CHのMADI仕様で57~64CHは制御信号等で使用していますが、MicstasyのIDの設定により57~64CHをAudience MicのMADI OUTとして使えます。

あるいは1~8(ID=1)でも9~16(ID=2)でも49~56(ID=7)でも、8CH単位で1~64CHの任意のブロックに割り込みが可能です。

さらに、もうひとつメリットがあります。

DiGiCoのラックからはコアキシャルでMADI信号を受け取りますがMicstasyはコアキシャルとオプティカルの両方から同じMADI信号を出力することが出来ますので、コアキシャルとオプティカルを2台別々のUFX+に分岐して録音する事が可能です。

【村上】

これが、最近の僕の典型的なセットアップとなります。

ステージボックスからもらったMADIをHA(Micstasy)にて受け、ここで、オーディエンス マイクの音を乗せたら、Micstasy上でMADI信号を2系統に分岐。

それぞれ、Firefafce UFX+ に送り、録音を行います。

【村上】

Fireface UFX+は1Uですが94チャンネルもの入出力があり、MADI信号もそのまま受信可能なRMEのフラッグシップ・インターフェイスです。

設定によりコアキシャルでもオプティカルでも、あるいは二重化でも、MADIを受信することができます。

僕のシステムでは2台のUFX+を使用し、片方はコアキシャルで受け、もう一台はオプティカルで受けます。

小さいながら全部の入出力が俯瞰できるメーターは見やすいし、Macとの接続状況を示すインジケータもUSB3やThunderbolt接続で色が変わってわかりやすいし、MADIを受信した時も、視覚的に知らせてくれたりします。

2つあるヘッドフォンアンプも強力なので、半端なくデカい音の中でも余裕でモニターすることができます。

 

【村上】

DAW ソフトにもこだわってます。

2つの異なったDAW、Studio OneとSEQUOIAを使っています。

Studio Oneは、音質良いし軽くて安定した動作、見やすい入力メーター、ドングルを使わないでオーソライゼーションが可能なのが良いです。

SEQUOIAを使っている理由は、いつもお仕事をお願いしているマスタリングエンジニアも絶賛のプレミアムな音質が1番の理由だが、桁違いのバッファサイズがとれるためか、安定した動作が失敗の許されないライブレコーディングの現場では特に嬉しい。(僕の環境では、普通のDAWが2,048サンプルとかに対して、SEQUOIAは32,768サンプルとか設定することが可能。)

どちらのソフトも留意点は2つ。最重要はクロックの設定(もちろんMADI Syncに設定)とI/Oセットアップです。 そこさえ間違えなければ大丈夫。

【村上】

Studio OneもSEQUOIAもオーディオ インターフェイスには、RMEのFireface UFX+を使ってるんで、裏面ではTotal Mix FXが動作している。

最新版のTotalMixは、表示のカスタマイズも楽になったし、iPadでリモートも可能。 Total Mix Remoteはマジにオススメ!!!!

 

【村上】

また、Fireface UFX+には、本体にUSBスティックを挿しておけば、全てのチャンネルをUSBドライブに録音できる「DURec」 という機能があり、DAWソフトでの録音と並行してDURecを使うことで、一台のインターフェイスで2台分の録音ができるためとても便利です。

本体上で、バックアップ状態(書き込み速度やエラー監視)も常時チェック出来るんで、いいことずくめです。

 

【村上】

何故Pro Toolsで録らないかよく聞かれますが、ProToolsはAvidのハードウェア(HD MADI)以外では32CHまでしか録れない仕様なのです。(Pro Tools指定の場合はHD MADI使って録りますケド. . . . 費用が高くなります)

ちなみにStudio One も SEQUOIA もトラック名がついたWAVファイルが生成されるので、そのままPro Toolsに読み込む事が出来ます。 もちろん、ドラック&ドロップでもOKなので、ミックス作業は慣れたPro Toolsでって時でも、収録は大体 Studio One と SEQUOIAでおこなっています。

 

=おすすめアンビエント マイクのご紹介=

【エムアイセブン三橋】

元AKGのエンジニアが立ち上げ、ウィーンにおけるハンドメイドのカプセルを復活させたブランド、Austrian Audioのマイクをご紹介いたします。 https://www.mi7.co.jp/products/austrianaudio/about/

 

【エムアイセブン三橋】

特にハイエンドモデルのOC818は、デュアル ダイアフラムのモデルとなっており、それぞれのダイアフラムの音を個別のトラックに収録しておくことにより、後で、DAW上にてそれぞれのダイアフラムの音をブレンドすることにより、指向性を変更できます。 例えば、ギターアンプに使った場合、裏面のダイアフラムの音量をミックス時に調整しライブ感を出したりと、EQとは異なるアプローチで音質を変更することが可能です。

 

【エムアイセブン三橋】

さらに、別売のBluetoothオプションを使うと、マイクをiOSアプリからコントロールすることもできます。 例えば、高い位置に固定されたマイクの指向性も、この機能を使えばいつでも簡単に変更することができます。

また、ピークメーターもついておりますので、キックドラムなどに使う場合でも、ショーの途中でPADをONにしたりすることができ大変便利です。

 

【村上】

最近は、Danteを使うこともとても増えていますが、実はDanteからMADIに変換、または、MADIからDanteへの変換もコンバーターを使えば普通にできるんです。

僕が今欲しいのはRMEのDigiface Dante

普通にDanteのインターフェィスとしても使えるし、コンピューターを使用しないスタンドアローン・モードで64chのDante > MADIコン バーターとして使えるんで、いつも使ってるMADI Recording Systemの前段にコレを入れるだけでMADIでもDanteでも同じシステムでいけるんです。

 

 

 

=おすすめコンバーターのご紹介=

【エムアイセブン三橋】

ここで、ライブ現場で「必ず」重宝する、マルチコンバーターをご紹介します。

その名もズバリ「マルチバーター」というのですが、Appsys ProAudioというブランドです。

このコンバータ一があれば、Danteもらいでも、MADIもらいでも、どのような現場でも確実にこなすことができます。

【エムアイセブン三橋】

さらに、別売のSRCオプションを使えば、 サンプリングコンバートはもちろんのこと、いわゆる、デジタルの「縁切り」ができるため、FOHに絶対に迷惑をかけない録音が可能となります。

 

*デジタルの「縁切り」に関して詳しくは、お問い合わせフォームよりお問い合わせください。

 

【村上】

最後に、、、 これが、以前の私のシステムです。

たくさんのHAをADATでまとめて、MADIにして、それを分岐しているのですが、非常に物量が多いです。

 

【村上】

そして、これが、最近のシステムです。 とてもコンパクトになり、現場でのセットアップもクイックに行えますので、それ以外の作業により多くの時間を割くことができるようになりました。

 

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Copyright (c) 2019 MI7 JAPAN Inc. , author by Teruo “Mu-” Murakami

 


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